第12話 ブランドとは「想い」からスタートする。
「やっぱり、『想い』から考えていくことが大切なんですね。」
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
先日、当社にご相談に来られた経営者がもらした一言です。改めて、自社のブランドづくりに力を入れていきたいとのことで、ご相談頂きました。
ご相談でよくあることですが、様々な手を打っていても、何か思ったようにいかない、うまくいっていない、しっくりこない、ということがあります。それは、戦略や戦術レベルの問題ではなく「想い」の問題である場合があります。
その場合、会社や事業自体について、「どうあるべきか」そして未来に向かって、「どのような理想の姿を目指すのか」という「想い」を改めて見つめ直さなければなければなりません。長く事業を行っていると、時代や環境の変化の中で、改めてこの「想い」を追求しなければならない時期があります。
どうなりたいかという「想い」が明確でないとすれば、どうすべきかの戦略は描けず、結果として、ブランドをつくることはできません。
どんな経営者であっても、自社や商品がブランドとなることは1つの目指すべき目標ではないでしょうか。
ブランドになることは、一般消費財の中でも高額商品だけに限りません。BtoBのあらゆる企業も、BtoCのあらゆる企業も、自社がいる業界のなかで、唯一無二の憧れられるブランドとなること。このことが結果として、長期的な繁栄と収益の向上につながることは、疑いの余地はありません。
ではいったいどうやってブランドになるのでしょうか?
様々なプロモーションやデザインに力を入れたところで、それは本質的にブランドにつながる活動なのかどうかは、別であったりします。
もちろん、ひとつひとつの活動が無駄ということでありませんが、ブランドにつながる連動感のある活動になっているのかどうか、ということを改めて見つめ直す必要があります。
経営者の頭の中では、今、調子がよくても、いつ足元を救われて一気に負け組になってしまうかもしれない、このままではまずいのではないか、いつか見た死の谷がまた刻一刻と迫ってくるような恐怖感に悩まされることもあるでしょう。
そのためには、本当に、自社や商品の価値が、あるべき、より高い価値として、顧客に伝わり、それが結果として購入されファンになってもらっているのかどうか、そのことを改めて見つめ直すべきではないでしょうか。
業界の中で一歩抜きんでる、それは、ただ単に商品の差別化をすることだけでは継続的に成長していくことは難しく、改めて「想い」から考えていくことが大切です。
ブランドとは「想い」からスタートするのです。
ところで現在、元気な会社は、どんな会社でしょうか?
大企業でいえば、その多くの会社が、創業オーナーが経営している会社でしょう。ソフトバンクしかり、ユニクロしかり、ニトリしかり。
2016年の世界時価総額のトップ5はどこかご存知でしょうか?
1位がアップル、2位がアルファベット(グーグル)、3位がマイクロソフト、4位がフェイスブック、5位がアマゾンと、いずれもIT企業ではありますが、アップル以外は、すべて創業オーナーがまだ健在です。
アップルも、創業オーナーであるスティーブジョブズは2011年に亡くなりましたが、現在もその余禄で成長を維持していることは否めません。
一方で、日本では、歴史ある電機メーカー各社が苦境に陥りました。ソニー、パナソニック、シャープ、東芝。
現在でこそ、ソニーやパナソニックは持ち直しましたが、それでも何年にもわたって、大変厳しい時期がありました。
私は、ビジネススクール留学時代に、アメリカのボストンに日本の企業が集い、就職活動イベントが催され、そこへ参加したことがあります。そのなかで当時、三洋電機は積極的にMBA採用を行っておりましたが、結果としてはパナソニックに吸収されてしまいました。
これらの企業は、資本力や優秀な人材を抱えながら、何が、問題だったのでしょうか?
その1つに、創業オーナーとサラリーマンから出世した社長との大きな違いがあります。
意思決定のスピードなどもありますが、大きく1つ言えることは、「想い」の強さに違いありません。
創業から、強烈な「想い」を体現している人間が経営していることこそが、違いを生み出しているのでしょう。
私も個人的には、サラリーマン時代は、「想い」の大切さはわかりませんでした。
新卒後、学んだ中小企業診断士資格での勉強でも、またビジネススクールにおける授業でも、経営目的やミッションという言葉については学びましたが、そのことがどれだけ事業に影響を与えるのかわかりませんでした。むしろ、良い戦略を立てていくことが、企業成長の大きな要素だと考えておりました。
アメリカでも、「想い」について研究されているビジネス書を、あまり見聞きしません。学問として研究された「ビジョナリー・カンパニー」という当時スタンフォード大学経営大学院の教授であるジム・コリンズ氏の書籍が、唯一それに当たるのかもしれません。
その他は、ドラッカー以外、学問的な研究が追求されていないと感じております。
どちらかというと戦略論や組織論ということに終始しているきらいがあります。
しかし、ある創業経営者に言われた一言があります。
「私は45年以上経営してきたが、経営目的や想い、ビジョンのない、知り合いの会社は、ほぼ全て潰れていきました」と。
また日本で何百年も続いている企業を見ると、その多くが、家訓のようなものを大切にしております。
もし、何代も続く経営者に「想い」が不足しているとすれば、改めて創業の精神を見つめ直すことも大切ですし、ご自身の「想い」を振り返る必要性があるのかもしれません。
ブランドとなること。それは、いつでも「想い」からスタートするのです。
最後に、吉田松陰の言葉を紹介して、今回のコラムを締めくくることにしましょう。
「志を立てて、以って万事の源となす」
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
【追伸】
次回、9月のセミナーでは、BtoBの特殊な領域で事業を行っている会社が、市場をつくっていくプロセスや、「売り方」で突き抜けた事例など、コラムでお伝えしきれない内容をご紹介します。これから、新しい取り組みをしていく経営者にとって、絶対に外せない重要な視点について丁寧にお伝えします。
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