第34話 戦略ノウハウを積み上げるということは?
「私の頭の中に戦略はあるのですが、それを部下と共有できておらず、今後が不安です。」
先日、ご相談に来られたある経営者の悩みをお伺い致しました。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
その会社は、ある程度、業績も順調で、右肩上がりに成長してきました。しかし、これ以上の成長を考えたとき、社長一人が、戦略を考え、実行していくことに限界を感じ始めていました。
ある程度の勝てる戦略は、頭の中で描けていたものの、それをどうやって部下に共有し、戦略として組織に落としていくのか、この戦略の言語化と共有に悩まれているとのことでした。
このように、これまで創業者で成長してきた会社や、2代目、3代目でも、カリスマ性があったり、社長のトップダウンで経営を行ってきた会社によくあるお悩みです。
成長しているので、贅沢な悩みといえば、それまでですが、その多くは、次の成長の壁を感じています。自分のように、自ら考え実行し、成果を出していくような右腕や部下が欲しい、と多くの経営者が願います。
しかし、それができるような有能な方は、たいがいすでに起業しているか、大企業で活躍しております。そのため、なかなか雇用するということは難しく、やはり自らが先頭を走りながら、戦略を共有して、実行させながら成功体験を持ってもらう、ときには、事業や商品を丸ごと任せてみる、といった経験を積ませていくことで、成長を促していくことが社長としての大切な取り組みとなります。
しかし、戦略を共有して、といっても、そもそも戦略が見える化されていたり、明文化されているのか、といったら、なかなかそのようにできている会社にお目にかかったことがありません。
ものづくりなど工場を持つ会社などでは、生産性の向上という目的のもとで、改善運動を積み重ねて、作業の効率化を図ることでその目的を達成していきます。これは、現場での創意工夫によるところも大きいのですが、比較的、目に見える物事に対して取り組むため、何をどのように取り組むことが生産性の向上につながるのか、を計測しやすい側面があります。
一方で、売上を上げるための生産性の向上(売上を効率的に上げていくこと)、となると、これは、なかなか一筋縄ではいかないイメージがあります。そもそも、顧客や競合といった不確定要因があるため、必ずしも計画通りに進まないことが往々にしてあり、一度決めた計画があっても、計画通りに数字が進まなければ、その計画自体の見直しをしなければならず、ここに画一的なやり方を導入しづらい、という側面があります。
では、そうなると、売上を上げるための生産性の向上に取り組まなくて良いのか、つまり、戦略を立てずに、直感と想いの強さだけで推し進めて良いのか、行き当たりばったりで、売上をつくっていけるのか、という疑念にぶち当たります。
「想いなくして戦略立たず、戦略なくして実行できず、実行できずして成果も生めず」
企業の想いをビジョンとしてゴールを掲げ、そこに向かうための戦略を立て、愚直に実行する、その結果、成果につながることを考えると、やはり戦略を立てることの大切さがあります。
そして、さらに言えば、売上を上げるための戦略ノウハウの積み上げ、という視点が大切です。
事業という生き物ですから、必ず同じ状況に何度も巡り合うということはないものの、それでも、ある程度の想定できる状況や環境に対して、どのようにやったら、一番効果が出せるのか、という戦略ノウハウを、一つ一つ自社なりに構築していくのです。
その戦略ノウハウの積み重ねによって、社長や組織内に、ある程度の経験的な読みを持つことができるようになります。ある戦略を実行したらうまくいった、これはうまくいかなかった、といった仮説検証の積み重ねができてきます。
あるとき、その一つの仮説が大当たりし、一気に会社としてブレイクする場合があります。上場までこぎ着けるような企業は、この仮説検証の繰り返しによって、当たる仮説を作り上げているのです。
まさに勝ちパターンをつくる、ということです。
例えば、ミスミ。この会社は、BtoB(Buiness to Business企業間取引)で金型業界において、営業マンが工場へ御用聞きといったことが当たり前の世界で、カタログによる金型通販という戦略が見事にあたり、上場しました。また、その通販の仕組みを文具業界に取り入れたアスクルも上場しました。
また、株の世界にネットを持ち込んだ松井証券や、生命保険の世界にネットを持ち込んだネットライフ生命も上場しました。
最近では、CtoCといったネット上での消費者同士の取引でメルカリは上場しました。
これらの会社は、イケル戦略を見つけて、一気に成長カーブを駆け上ります。それは時代に合ったビジネスということもある一方で、経営者の頭の中で、仮説検証を何十回も何百回も繰り返した結果なのではないでしょうか。
当社のお客様の、ある食品会社は、商品開発の勝ちパターンを社長や社員自らが身につけ、新商品ヒット率を劇的に引き上げ、数年で年商を2倍までもっていきました。
そこには、一朝一夕にはできない、戦略ノウハウの積み上げがありました。
あなたの会社も、自社独自の戦略ノウハウを積み上げ、売上をあげるための効率的な戦略の構築、共有化を組織内に定着させ、次の壁を乗り越えていく準備をしていきませんか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
【追伸】
自社独自の戦略ノウハウを積み上げていくためには、まずその骨格となる戦略の組み立て方を知る必要があります。
当社では、これまで10年300社以上のコンサルティング経験から導き出したノウハウを、実践した数々の事例とともにセミナーでお伝えしています。戦略思考に必要な、重要ポイントを体系立ててお伝えしていますので、ご興味がある経営者はぜひ一度ご参加ください。