第45話 どうやって会社のブランドを確立できたのか?
「おかげ様で、自社商品が売れ出し、その影響で受託のお仕事も増えました。年商は、 1.3倍に増えました。」
当社の指導を受けられた経営者からのご報告でした。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
こちらの会社は、金型製造を中心としたものづくり企業です。社長は、2代目の経営者 で、事業を継承した直後に当社の指導を受けに来られました。今から7年ほど前のことで す。
指導を受けにこられた当時は、いくつかの会社をM&Aした直後で、今後の事業をどう やって展開していくか、どうやって組織をまとめていくか、そういったことに課題を持た れていました。
社長は、これらの課題を解決していく1つの解が、「マーケティングができるようになることではないか」ということをおぼろげに意識されていました。
そこで、知人の紹介で当社の指導を受けに来られました。
指導を受けられた当時は、M&Aで大きくなった組織の方針を固めるために、戦略的な 視点から、事業ポジショニングを考えて、会社のブランディングに挑戦されました。
そして、以下のコーポレートメッセージを打ち出しました。
「アイデアと技術力のものづくりパートナー」
同社は、当時は受託の仕事が100%でした。その受託の仕事を、単に頼まれたモノを 作るだけではなく、アイデアと技術力を提供できるパートナーとして存在すると定義しました。
また、アイデアと技術力を活かした、自社商品の開発にも挑戦していくというメ ッセージでした。
会社の未来を描いた戦略方針の策定、そして、会社のブランドイメージを刷新するプラ ンニングまでを社長自らが作りこみ、当時そのプランニングの内容を見たときに、素晴ら しい内容に仕上がっていたことを記憶しています。
その後、社長は、当社がお伝えしたカテゴリーキラーづくりの戦略ノウハウをフル活用 して、さっそく初めての自社商品の開発に挑戦しました。その商品とは、スマホ関連のアクセサリーグッズです。
発売直後から、メディアで多数取り上げられ、4万個以上売れる同社初のヒット商品となりました。そして、日本のみならず、世界各国40ヶ国以上に広がる人気の商品となりました。
テレビや新聞などメディアに出ると商品だけでなく、会社も紹介されます。
その際に は、「アイデアと技術力のものづくりパートナー」の会社として紹介されますから、会社が向かうべき方向が、実績を伴って社員に認識されていきました。
この最初のヒット商品は、まさにカテゴリーキラーとして、売上を作っただけでなく、
同社の組織、機運を1つにまとめ上げていったのです。
同社は、その後も手を止めることなく、2つ目、3つ目の商品開発に挑戦していきまし た。そして最近、3つ目の商品が発売となりました。こちらは、医療業界のドクターのお 役に立てる、特殊な器具です。
この商品は、業界大手の商社との契約が一発商談で決まり、一気に全国の販路を確保しました。そして、発売直後にこの商品のモニター希望者のドクターが殺到し、現在は、5カ月先まで予約で一杯の状態です。
同社からは、以下の報告を頂きました。
「当社の商品開発は、いずれもミスターマーケティングさんの指導を受けた内容をしっ かりと活かしています。そして、新しい挑戦を積み重ねてきました。
おかげ様で、自社商品が売れるようになっただけでなく、受託の仕事も増えて大忙しです。ホームページから の問い合わせも質がぐんぐんと上がっています。
以前は、相見積もりの問い合わせが多かったですが、今は、もっと川上の技術的な相談 やアイデアを必要とする内容など、まさに当社が欲しいお客様からのお問い合わせがくるようになりました。しかも、ほぼ毎日問い合わせがくる状態で大忙しです。」
売れる商品を生み出して、会社、組織に一体感が生まれる。そして、価格競争に陥らな い仕事が増える。当然、利益率は高まります。まさに、社長自らがPDCAサイクルを回 し続けてつくった好循環です。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Ac tion(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善することです。
同社が回したPDCAサイクルは、カテゴリーキラーづくりに必要なノウハウ、つま り、自社商品を市場に適合せる戦略ノウハウを構築し、これを繰り返したということです。
よく、PDCAがうまく回らないという相談を受けますが、大きなポイントは、最初の Pです。当社の指導では、このPにしっかりと時間をかけてもらいます。
Plan(計画)がしっかりとできていないと、Do(実行)がうまくできないばかり か、Check(評価)もできず、何をどうAction(改善)したらよいか分からな くなります。
例えば、狙っていく市場のメインターゲットは、ずれていなかったか、そのターゲット の抱えるニーズの仮説は合っていたか、そのターゲットに伝えるべきメッセージは、本当 に心に響いていたか、こういったことは、Plan(計画)の段階で、よくよく検討され ていなければ、実行、評価、改善はできません。
もし、あなたの会社が、自社の戦略Plan(計画)がないとすれば、それは、毎年毎 年、航海マップがない大海を、右往左往して、さまようようなものです。そうであれば、 この先何年かけても、市場に向き合う戦略づくりに関するPDCAサイクルの質は高まりません。
製造現場などであれば、現場の運用に関するPDCAサイクルはイメージできるでしょ う。それと同じように、自社商品・サービスを市場に適合させていくための戦略づくりの PDCAサイクルもあるのです。どの会社も、何をどう売るかという単純な課題視点だけでなく、自社のノウハウとして、戦略づくりのノウハウ、レベルを上げていく課題に向きあう必要があります。
経営者が、このPDCAサイクルをどのようにとらえるべきかといえば、お勧めは、毎 年1回、しっかりと戦略プランを作りこむ、それを、戦略方針書として定めます。
この時に間違ってはいけないことは、戦略は、会計上の数値計画や目標設定だけではな いということです。
ここでいう戦略について、私どもが重視していることは、自社の商品・サービスをどうやって市場に浸透させ、売上をつくっていくか、その核となる、方針、具体的なアクショ ンが盛り込まれているか、そして、新規の顧客は開拓できるのか、既存の顧客は維持拡大できるのか、そういった ことがイメージできる必要があるのです。
毎年1回、この内容を見直していき、2~3年のスパンでPDCAサイクルを回してい くことが理想です。
今回、本コラムで紹介させていただいたものづくり企業は、最初に自社が向かうべき方向性を定めて、コーポレートメッセージなどを整理して会社のブランディングを行いました。そして、そこから7年間で3つの自社商品を 生み出し、そしてPDCAサイクルの質を高めてきました。
自社商品がメディアに出るたびに、会社が紹介され、業界における自社のブランドイメージを高めていくことができました。結果として、価格競争になりにくい受託の仕事が着実に増えていき、年商も1.3倍の規模になりました。今後は、受託の仕事ではなく、自社商品の売上比率がどんどん高まっていくでしょう。
いまや社長は、実績を伴い、マーケティングプランと実践ができる、立派なマーケターといえる社長になっています。
中小企業の社長は、自らマーケティングができる人材になる必要がある。
それで会社は、よくなると断言できます。
気をつけて欲しいのは、マーケティングをプロモーションと同義にとらえる人が、いまだに多くいることです。プロモーションは、マーケティング活動のほんのごく一部です。
もっとも大切なマーケティング活動は、売れる商品・サービス、つまりカテゴリーキラ ーを生み出すことです。
受託のお仕事が中心の会社も同じです。その場合は、まずは自社が提供している商品・サービスまたは技術力そのものを カテゴリーキラーにしていく必要があります。
あなたの会社には、自社の戦略を高めていくPDCAサイクルはありますか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝
【追伸】
現在、本コラムで紹介したものづくり企業の具体事例の詳細レポートを作成中です。別途、皆様にお届けしたいと思います。
また、本コラムで紹介したものづくり企業について、次回、1月のセミナーでご紹介させて頂く予定です。セミナーでは、中小企業に必要な戦略づくり、PDCAを回す重要ポイントについて、4時間の時間をかけて解説いたします。
来年こそは、戦略づくり、カテゴリーキラーづくりに挑戦しようと真剣 にお考えの経営者のお役に立てます。ぜひご参加ください。