第77話 今、経営者が取り組むべきことは何か?
「私は、将来○○という事業をやりたいんです」
先日、当社のスポットコンサルティングで、ある経営者から、ご相談がありました。
当社は、2007年7月に創業して以来、一貫して「想い」×「戦略」をミッションに掲げ、経営者の想いを大切にし、それをいかにして戦略に落とし込み、実現していくかというコンサルティングを行ってきました。
そのため、経営者が語る夢やビジョンは、やはり素晴らしいものであればあるほど、共感し、そのような企業のお手伝いをしたいと思うものです。
それは、その夢やビジョンが実現された暁には、コンサルティングという立場を通じて、その実現の応援をすることができるからです。
そのため、冒頭のような企業がご相談に来られ、経営者が夢を語るとき、我々もとてもワクワクします。
しかし一方で、現業についての実情を尋ねると、まだまだ改善の余地があり、やり方によっては伸ばせるのではないか、と思うこともあります。
経営者が将来やりたい事業を語り、そのことについて考えることは、重要だと思いますが、その将来の事業へ投資を行う上でも、また、もっと安定した基盤を作る上でも、いったんは、今、目の前の事業をもう少し伸ばすことに注力した方が、良いのではないか、と思うことがあります。
どちらに軸足を置くべきかは、企業によっても、その状況によっても、ケースバイケースであるものの、基本的には、このコラムの私の写真のコメントにもあるように、「足元の事業を固めて、新たな事業で攻める」ことが大切だと考えています。
つまり、守りと攻めのバランスを経営者は絶えず取りながら、経営を考えていかねばなりません。
これまでも、当社に様々なご相談がきました。
新しい事業の立ち上げの相談、新商品、新サービスの企画、開発、販売もありますし、また、現在行っている事業や、商品、サービスのテコ入れのご相談もあります。
そのようなご相談を受ける中で、コンサルティングが始まる前に、経営者がテーマを決めている場合もあれば、いくつかの選択肢を考えているのだけれども、コンサルティングを受ける時点では決まっていない場合もあり、コンサルティングを進めながら、テーマを絞っていくケースもあります。
昨年、新しい分野における商品の開発をやりたいと、ある雑貨メーカーの経営者がご相談にきました。ご相談を受ける中で、既存事業の商品をもう一度トライして、なんとかこれまでやってきた事業分野で、もう一花でも二花でも咲かせたいと思い立ち、コンサルティングに取り組みました。その結果として、既存事業における商品開発によって、大成功したケースがありました。
そうして企業が利益を出し、体力ができれば、新しい分野においても投資をすることができ、焦らずとも勝ち戦にしやすい状況を作り出すことができます。つまり、「足元の事業を固めて、新たな事業で攻める」ことができます。
もちろん、新しい分野における新規事業の立ち上げや新商品や新サービスをつくることを闇雲にやめたほうが良いと止めているわけではありません。
あるIT系のサービス会社は、既存事業が非常に安定した事業構造を持っており、右肩上がりの成長を続けている中で、次の柱を作りたいと相談があり、新規事業の立ち上げのコンサルティングを行いました。つまり、すでに足元の事業は固まっていたため、次の新たな事業の展開を模索していきました。
立ち上げまでには、いろいろと苦労はあったものの、社内でも承認され、素晴らしいスタートダッシュを切って、ひとつずつカタチにしきながら長期で取り組んでいる会社もあります。
そのように、既存事業が比較的安定成長していたり、また資金的余力が十分にある場合には、新規事業への取り組みによって、新しい収益の柱を作っていくことを考えていくことは、経営者の選択としても重要なことだと思います。
また、ある食品メーカーは、業務用として使われる販売先を中心とした営業を行ってきました。しかし、経営者の強い想いによって、一般消費者が購入する食品スーパーなどへも、ここ数年力を入れてきました。
その会社の幹部を始めとして、営業マンは、これまでの業務用食材の売上が右肩上がりだったことから、慣れない食品スーパーへの営業に対して、あまり気が進んでいませんでした。
しかし、その経営者も辛抱強く、時間をかけて営業マンを育てる決心をして、当社もお手伝いさせて頂く中で、マーケティングと営業が連動し、次々と顧客開拓ができるようになりました。そして、食品スーパーへの売上が、その会社の売上を半分近くまで占めるようになりました。
さらには、その会社の工場での製造のみならず、食品原料の生産へも打って出て、それらがカテゴリーキラー商品として、業界に認知されるように力を入れてきました。
そして、今年のコロナが起きました。
業務用食材の販売は激減しました。その業務用食材の担当者は、売上が消えて辛いと言っていました。一方で、食品スーパーへの食品の販売が好調で売上が伸びました。会社としては、決して楽観視できるような状態ではないものの、もし業務用食材だけに絞っていた営業をしていたら・・・、ゾッとするような状況に陥っていたはずです。
この会社の経営者は、足元の事業を固めることに余念がなく、それも時間をかけて1つずつカタチにしていきます。長期の視点で物事を俯瞰して考えています。そうして、足元の事業が固まることを見えてきたら、次の新しい事業を手がけて、盤石の体制をつくっていきます。
このコロナ禍のような状況が起きるリスクを考えると、1つの柱に頼りすぎる事業体というのは、突然収益が絶たれてしまう場合があります。
そのため、選択と集中によって1つの事業にフォーカスする時期を作りながら(つまりカテゴリーキラー、そして商品群としてのカテゴリーブランドとつくっていく時期を作りながら)、次の事業の種をまき、長期で分散する、といった力を入れるバランスが重要です。
何も新しい分野の新しい事業を立ち上げることのみを、選択肢として考えていかなければいけないのではありません。
例えば、既存の商品を使って、新しい販路、チャネル開拓、新しい顧客への販売を考えたり、また、これまで培ってきた技術を使って、既存の顧客に新しい商品を開発して販売していくということも考えることができます。
時代の変化や、先々の起こりうるであろう変化も考えていきながら、今、どのような打ち手を打つべきかを考えていくことが大切です。
そのためにも、まず足元を見つめてみて、もっとできることはないか、もっと持っている強みや資産を活用できないか、もっとブランドとして価値あるものに磨き上げることはできないか、そのような視点を持って、一度掘り下げてみることはいかがでしょうか?
自由に身動きができないような、このコロナ禍の中で、思考まで停止してしまったら、次の行動へ起こすことができなくなってしまうでしょう。今だからこそ、できることを具体的に考えて、1つずつでも実行に移していくことが、経営者に一番求められているのではないでしょうか?
ぜひ、足元の事業を固めて、新しい事業で攻めていきませんか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
追伸
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今、なにをどうすべきか、そのことを考える機会として、ただ、知識を学のではなく、当社の様々な事例と、経営者が取り組むべきプロセスを聞くことで、考えが整理できるだけでなく、新しいアイデアや発想も浮かんだ、と感想をお伝えいただく参加者もおります。
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