第91話 コロナ禍で考える、ココから掲げたい「目標」とは?
「おかげさまで、次の目標が見えてきました!」
先日コンサルティングを受けられた経営者から、数日後にこのようなコメントを頂きました。
経営者が目標を持つことについて、異論を挟む余地はあまりないでしょう。
ただ、その目標が、
「適切な目標か?」
と問われると、胸を張って、
「はい、もちろん、適切な目標です!」
と答えることができるかというと、果たしてどうでしょうか。
コロナ禍が続き、先行きがあまり見えない中で、今、自社にとって何を「適切な目標」として掲げることができるのか、どんな経営者であっても、なかなか難しいのではないでしょうか?
先日も、クライアントの、ある食品メーカーの経営幹部の方から、
「おかげさまで、このコロナ禍でも、コロナ前の数字にほぼ近づいた売上を維持できています。利益はといえば、大幅に経費を見直し、また正直、出張なども減ったことから、むしろ大きく増えてしまっています。
ただ、何をもってして、この数字が良いと言えるのか、いやむしろ、もっと良かったのではないか、と思うところもあり、何が良いのかわかりません。
それは、そもそも対前年比での数値的な比較が難しいことが挙げられます。そのため、当面は、あまり数値的な目標にこだわりすぎず、今できることを精一杯やりながら、次の手を打っているところです」
と話していました。
この食品メーカーは、これまで対前年比で伸び率、約10%を目標に掲げて順調に業績を伸ばしてきました。しかし、このコロナにおいては、その計算式もあまり役に立たないと言っていました。
それでも同業の同規模の企業からすれば、このコロナ禍でも、しっかりと地に足の付いた経営を続けています。そして利益を出し続けているところは、凄いことだと思います。
ところで、目標と言っても、何も数値的なものだけではありません。
例えば、いついつまでに○○をつくろうとか、○○ができることを目指そうとか、何をいつまでに行うのかな、なども1つの目標と言えます。
このように考えていくと、売上や利益などの数値的な目標(定量目標)はもちろん大切ですが、売上や利益などの数字ではない目標(定性目標)も、一方であるのではないでしょうか?
冒頭、ご相談のあった経営者は、これまでコンサルティングをさせて頂く中で、昨年と今年にわたって2つのヒット商品を生み出し、会社の業績も大きく伸ばしました。そして、目標にしていた、いくつかの賞も受賞しました。
さらには今年、およそ10年前から目指していた、ある団体の賞も受賞することが確定しているようでした。
まさに、昨年から今年にかけて、想定していた目標、定量目標も定性目標も、ほぼ全てを達成してしまったとのことでした。
そのある団体の賞を目指していたことは、まさに上記で述べた「定性目標」で、その表彰の舞台に経ちたいと長年目指してきた目標の1つでした。それもようやく達成されようとしています。
ただそうなると、次に目指すべき目標が見当たらないことに気づきました。目標が見当たらないと、具体的に何をやっていくべきかが見えてきません。いやもし仮に見えていても、何から手を付けて良いのかがわからなくなってきていました。
そうこうしているうちに、目の前の忙しさに追われて、ただただ時間が過ぎてしまっていました。
そこで、つい先日、当社にご相談に来られました。そもそものご相談は、戦略として、今後何をすべきか、ということだったのですが、掘り下げていくと、前述したように、思い描いていた目標をほぼ全て達成されて、次の目標があまり見えていない状態でした。
話を整理しながら進めていくと、その会社にとって1つの確固たるポジションを、その業界の中で築いていくために、定性目標として、ある目標を掲げることを勧めました。
そうしたところ、その経営者も、スッキリした顔をされて、冒頭のコメントのように、
「おかげさまで、次の目標が見えてきました!」
と語ってくれたのです。
さらに、その目標を掲げることで、ワクワクしてきている様子もうかがえました。
そして、それに伴って、具体的に何から手を付けたら良いのか、ということも見えてきました。
このように考えていくと、目標とは、ただ単に、会社として必達しなければならない数字的な目標だけではありません。
むしろ、その目標を掲げると、ワクワクしてくるようなものが良く、さらに、そのような目標であると、なおさら実現しやすくなります。
その理由は、これまで、300社以上の会社とお付き合いしてきて、大きな成果を出している会社の社長は、ワクワクする目標をもっているからです。
目標の効用の1つは、目標を掲げることで会社のエネルギーが集中されることがあります。
経営資源が限られる中小企業は、数多くの目標を掲げるよりも、数少ない目標を掲げて、全社一丸となって取り組んだ方が達成されやすくなります。
それは、社員のエネルギーが、その目標に集中されるからです。
また、目指すべき山の頂きが見えてくると、もう少しだと思って人は頑張れます。
もちろん、目標には、近さ、遠さといった距離、短期的か長期的かという時間軸もありますので、一概に、どのぐらいのものがいいかというのはありませんが、社員にとっても、わかりやすい目標というのは、目指しやすいのだと思います。
さらに、目標はわかりやすさも大事ですが、掲げる本人のみならず社員がワクワクできることも大切です。
もし今、経営者として、今後どんな手を打っていったらよいのか迷いがあったり、わからなくなってしまったりしたときは、一度立ち止まってみると良いと思います。
そしてこれから何を目指したいのか、そして、できれば、わかりやすくワクワクするような目標を掲げてみてはいかがでしょうか?
目標を掲げることによって、それを達成していくための具体的な行動も生まれていきます。当然、具体的な行動が伴わなければ、成果にもつながっていきません。ただ闇雲に行動していても成果につながらないことはわかるかと思います。
例えば、長年、経営されてきている会社であっても、これまでの成り行きのままの経営で、今後もうまくいくという保証はどこにもありません。
これまでは、顧客のニーズにうまく応えてきて、売上拡大に成功してきたとしても、そのことによって、新規顧客にとっては、何をしてくれる会社かがわかりづらくなってくる場合もあります。
お客様のニーズに応えていく姿勢は素晴らしいのですが、商品やサービスが散漫になってしまい、その問題についても経営者自身が気づいている場合が少なくありません。
もし、そのような状況をそのままにしていれば、新規顧客の開拓は思うように進みません。当然、売上が伸び悩む状態が続いてしまいます。
当社にカテゴリーキラーづくりの相談に来られる会社によくあるケースです。
そのようなケースでは、既存商品の中で有望な商品(またはサービス)をカテゴリーキラーとして再設計したり、新商品(またはサービス)を新たなカテゴリーキラーとして生み出したりすることもあります。会社そのものの方向性を改めて検討していくプロジェクトもあります。
いずれにしても、これまでの成り行きのままでは大きな改善は望めません。
そのような状況から脱していくためには、まずは、経営者自身がワクワクする次の目標を掲げて、業界や市場の中で、確固たるポジションを築いていくことが、今後の売上、利益を上げていく上でも重要な要素となります。
目標を掲げるにあたっては、2021年中や2022年中など、比較的短期間で達成したいことでもよいと思いますし、数値的な「定量目標」でなくても良いと思います。
「定性目標」で、かつ結果として売上や利益など数値的なものにつながりそうだと、感覚として思えるようなものであれば、なおさら良いでしょう。
コロナ禍の中で、数字がなかなか読めない、ということは、おそらく誰しもが感じるところです。ただ、例えば銀行の融資といった場合には、それでも数字をつくる必要があることは理解できます。
しかし、そのような状況でも、ご自身や社員がワクワクして取り組めること、目指せること、または社会に必要とされていること、などを、今一度、目標として、そして自社にとっての「適切な目標」として、見つめ直していく良い機会なのかもしれません。
これまで、ピンチに陥った状況から、ワクワク感が伴う、「適切な目標」を掲げ、そこから力強く躍進した会社をたくさん見てきました。
あなたの会社も、「適切な目標」を掲げて、しっかりと取り組んでいくことで、ここからさらに成長していくことができます。
もし今、何を経営の打ち手として考えたらよいか、とお悩みの方は、まず、自社にとっての「適切な目標」設定から考えてみてはいかがでしょうか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
追伸
これからの目標や、これから何をしていくべきか、または、やるべきことはわかっているけど、今ひとつ一歩を踏み出せない、など悩まれている方で、第三者の意見を聞いてみたいという方は、当社では、個別相談を受け付けております。
プロとして意見を聞いてみる、または客観的に評価してもらう、ということも良いですし、また、我々が質問させて頂く中で、ご自身で考えたり、話したりして、色々と気づいていくということも往々にしてあります。
最終的には行動に移すことが重要となりますが、そのためにも、今のモヤモヤを一度晴らしたいという方は、個別相談を、随時受け付けておりますので、ご活用ください。
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