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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第101話 町工場が生き残る、1つの戦略(第3回目)《個別商品のカテゴリーキラー化編》

本掲載は3回にわたって、「町工場が生き残る、1つの戦略」についてお伝えします。

 

第1回目は、まず経営をしていくにあたってのベーシックな考え方の部分に光を当ててお伝えしました。

 

2回目は、下請け専門だった金型製造業が、「カテゴリーキラー戦略」をもとに「受託事業のカテゴリーキラー化」を行い、成功した実例についてお伝えしました。

 

※「カテゴリーキラー」とは「競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと」

 

第3回目の本記事は、

 

「続:カテゴリーキラー戦略の取り組みに挑戦した下請け専門の金型製造業《個別商品のカテゴリーキラー化編》」

 

と題し、長期戦略で質を高めた自社オリジナル商品が、日本のものづくりの代表格に成長した軌跡をご紹介します。

 

特に、今後、新商品・新サービス開発を手がける場合は、PDCA(効果検証)を意識して、未来を見据えた長期的な戦略で実践する姿勢が重要です。

 

1.下請けの町工場が、自社の成長を加速させるために行った大きな決断

 

「お陰様で受託がどんどん増えました。今は、その原資を活かした新たな挑戦で、さらに価格競争に巻き込まれない経営ができています。あの時の戦略指導がなければ、私達の今はありませんでした。」

 

これは、第2回でご紹介した、「受託事業のカテゴリーキラー化」を見事に成功させた金型製造業F社長の喜びの言葉です。

 

この会社は、受託専門の製造工場として、自社の特徴を顧客に上手く伝えられずにいることを課題としていました。

 

そこで、F社長は、自分達のような中小企業にもマーケティング視点による考え方が必要であると考え、当社の指導を導入しました。

 

そして、最初に着手した「受託事業のカテゴリーキラー化」で、「アイデアと技術力のものづくりパートナー」というコーポレートメッセージを打ち出しました。

 

その結果、強みを活かした唯一性のあるポジションを業界内で確立し、受託の仕事が増えていったのです。

 

しかし、それはあくまでもクライアントの製品であり、自社のPR活動にはなかなか使いづらい現実がありました。

 

そこでF社長は、さらに自社の価値を高めるために、受託事業は継続しつつ自社オリジナル商品を作ろうと決意しました。

 

 

2.3段ロケット方式で行うノウハウ蓄積型商品開発

 

数十年間、厳しい大手の下請けで磨き続けた技術力を活かして、最初に開発したのがスマートフォンのカバーでした。独自性と遊び心のある商品です。

 

そのスマートフォンカバーから始まり第2弾のスマホ関連商品、そしてこれから本格的に市場投入を始める第3弾の商品まで、「受託事業のカテゴリーキラー化」で得た、カテゴリーキラーづくりのノウハウを活かすべく、F社長自ら、企画から商品開発、量産、販売方法に至るまで陣頭指揮を執って、効果検証を繰り返しました。

 

実は、この3つの自社オリジナル商品を世に送り出すのに、7年を要しています。この間F社長はPDCAサイクルを着実に実践されました。

 

PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4段階を繰り返すことですが、当社の指導でも重要視しています。商品開発を含むあらゆる業務を継続的に改善できます。

 

この結果、第1弾のスマホカバーは、世界43ヶ国から数万台の注文があり、第2弾の商品には根強いファンが付きました。

 

 

3.PDCAで蓄積したノウハウが詰まった第3弾「突出したカテゴリーキラー商品」

 

そして、市場投入をした第3弾は、過去の2つの商品開発の経験を大きく活かした、医療現場向け装置を開発しました。

 

この商品は、長時間に及ぶ手術の現場で医師の肉体的疲労する、今までになかった装置です。

 

そして、この第3弾商品で、強く意識したのは、「商品のカテゴリーキラー化」、つまり、これまでになかった唯一性の高い商品開発でした。

 

第1弾、第2弾の商品は、人気はあったものの商品名自体は覚えにくく、通称や愛称で呼ばれていたことを反省して、第3弾では、ターゲットである医師に伝わりやすいように、また、世の中の人がすぐに用途を想起できて、人に話したくなるようなネーミングを開発しました。

 

「受託事業のカテゴリーキラー化」で得た、カテゴリーキラーづくりのノウハウを、F社長が一つひとつ応用して実行していきました。

 

ネーミング、タグライン(ネーミングを補完する言葉)、ロゴマーク、それから、パンフレット、ホームページなど、商品そのものを魅力的に表現することを徹底していきました。

 

特に、商品デザインも実力のあるプロダクトデザイナーに依頼して、格好良いフォルムにもこだわりました。

 

この商品は、戦略的に数年間にわたり市場ニーズの動向を観察しながら、徐々に機能を高めていき、少しずつメディア露出をしていったのです。

 

そして満を持して販売開始しました。

 

その際には、PR対策としての発売記者会見も開きました。

 

 

4.質を高めた自社商品開発だからこそ成果を生み続ける

 

高額で精密な医療現場向け装置であることから、商品の販売開始後にまずはテスト期間を設け、希望する医師や病院にデモ使用として貸し出しました。

 

医療業界の販路は独特で、必ず指定代理店を通して売ることになるのですが、業界でも指折りの販売代理店2社と即座に契約が決まったことで、稼働するデモ機10台が、数ヵ月先まで予約でいっぱいの状態になりました。 

 

これは、PDCAサイクルを繰り返して商品開発の質を高め、かつ商品の伝え方・伝わり方に真剣に取り組んだ結果です。

 

そして、さらに驚くことに、この商品は各種メディアに日本のものづくり企業の代表格として取り上げられるようになりました。

 

なかでも、著名な大臣がテレビ番組内でそのものを自ら試用してみせたり、多くの人が知るビジネス番組で取り上げられたことは、大きく知名度アップに貢献しました。

 

その結果、この医療現場向け装置は、販売開始後、初年度から100台の受注の獲得につながりました。

 

長期戦略ではありますが、下請け専門だった中小企業が、商品づくりのフレームワークとPDCAを繰り返した結果、受託商品ではない自社オリジナル商品としての売上の柱をつくり、立派なカテゴリーキラーを確立させたのです。

 

その証拠に、F社長は、経済産業省からサポートを受けて、この商品ジャンルで初めてのJIS規格の作成依頼がありました。

 

そして、当初の目論見どおり、自社オリジナル商品で自社の価値を高めて、価格競争に巻き込まれない経営をできている、と冒頭の嬉しい言葉を語ってくれました。

 

「受託事業のカテゴリーキラー化」から始まり、7年の長期的戦略で打ち出した「個別商品のカテゴリーキラー化」は、会社の独自性をさらに推し進め、他社が一朝一夕では進出できない唯一無二のポジションを築くことにつながっています。

 

残念ながら多くの町工場が、目の前の課題に追われて長期視点を持てずにいますが、そのままではいつか行き詰まった時に対処しようとしてもできません。

 

ぜひ自社独自の強みを活かせる領域を探し、長期的な視点で事業のカテゴリーキラー化や、商品のカテゴリーキラー化に取り組んでみて下さい。

その取り組みが、必ずや長期的な企業繁栄へとつながります。

 

 

追伸:

町工場を含む、ものづくりの中小企業について書いた、

当社、書籍『小さなメーカーが生き残る経営術~独自市場のつくり方~』

をぜひご参考にください。

本書は、具体的な企業実例をもとに、ストーリー形式で描いたビジネス書です。

生き残るための経営術の1つとして、どのように「独自市場をつくる」かについて書きました。

ぜひ、まだお読みでない方は一度手に取ってお読みいただければ幸いです。

 

 『小さなメーカーが生き残る経営術~独自市場のつくり方~』

 書籍の詳細はこちら 

 アマゾンからもご購入いただけます。

 

株式会社ミスターマーケティング

 代表コンサルタント

                                                       吉田 隆太