第21話 中小企業は潜在的なニーズの市場を攻めるべきなのか?
「やっぱり、私が考えている新しいビジネスはニーズがないのでしょうか。」先日、当社のコンサルティングを受けている、ある経営者が、こうおっしゃっていました。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
その方は、10年ほど前に独立されて、法人向けにある受託のサービスを提供していました。数年前までは、十分な利益を出せていたということで、その利益を新しいサービスに投資し続けてきたそうです。しかし、受託の事業とは違い、その新しいサービスはなかなか形にならず苦戦されていました。
当社に相談に来られる企業は年商で5億円~50億円ぐらいの規模が中心ですが、個人事業主や少人数で経営されている経営者もよくご相談に来られます。飲食店、美容院、クリニック、特定商品の代理店、士業の方など実に様々な業種の方が相談に来られます。
そして、目の前のお仕事をこなしながらも、いつかは独自の商品やサービスなどで新しい市場を開拓して、事業を成長させたいという想いを持っている方も少なくありません。
その方も個人事業主として、これまでにないような新しいサービスを立ち上げて必死で努力されていました。しかし、なかなか売上につながらず、数年が経過したところで、受託のお仕事も減ってしまい、ダブルパンチで大変な状況になってしまったということでした。そこで、当社のコンサルティングを受けることになりました。
利益が出ている間に、次の売上の柱をつくろうとお考えの経営者は多いのですが、本業が悪化してくると、どっちつかずになり、大変な状況になってしまいます。そうなる前に、しっかりと市場に向き合った戦略を作り込む必要があります。
個人事業主の方や、社員数10名未満の企業の場合は、当社のグループコンサルティングを受けられる方が多いのですが、そこでよく出てくる議論が、顕在化ニーズの市場を狙うか、潜在化ニーズの市場を狙っていくか、という話です。
顕在化ニーズとは、既に、お客様が欲しいと感じている商品やサービスのニーズです。それに対して、潜在化ニーズとは、お客様ご自身が必要と感じていない、または気づいていない商品やサービスです。
例えば、今や多くの家庭で愛用されているロボット掃除機のルンバは、潜在化していたニーズを顕在化した、代表的な例ではないでしょうか。
それまで従来の一般的な掃除機を使っていた主婦は、ルンバが登場してはじめて「欲しい!」というニーズが顕在化しました。その後、後発の企業もどんどん参入してきました。そして、ロボット掃除機という大きな市場に成長していきました。ロボット掃除機という大きな市場を最初に切り開いたルンバが、今でもトップブランドであることは言うまでもありません。
顕在化ニーズを狙うか、潜在化ニーズを狙っていくかは、経営者が判断しなければなりません。後者の潜在化ニーズを狙い、これまでにないような商品やサービスを提供していくことは、夢やロマンがあります。
しかし、しっかりと売上が上がるまでに時間がかかることが多いです。また、顕在化ニーズを狙っていくことは、潜在化ニーズに比べて目先の売上は上がりやすくなりますが、価格競争で疲弊する可能性が高くなります。
どちらを狙っていくべきかの議論は、いくつかの戦略構築プロセスや検証を経て慎重な判断をしなければなりません。その際に、経営者の「想い」がひとつの判断の拠り所になります。
例えば、これまで、ご自身がお仕事としてかかわった業界に対して、疑問を持たれていて、「なんとか多くのお客様が困っている状況を解決したい!」とか「もっと、業界自体の体質を変えていかなければ市場が縮小してしまう。だから先陣を切って新しいことに挑戦したい!」「古い会社の体質を脱却して、新しい企業に生まれ変わりたい!」など、心から願い、強い「想い」がある場合は、経験上うまくいく可能性を秘めています。
一番よくないのは、取り組んでいる中心人物がなんとなくやっており、本気度が低いケースです。この10年間で300社以上の指導を行っていますが、まれにそのようなケースもあります。その場合は当社が一生懸命に指導をしても、なかなか前に進みません。
個人事業主の方や、小さな会社の経営者が、当社のグループコンサルティングを受けて、その後うまくいっていらっしゃるケースは、全てこの「想い」が強い方ばかりです。
新しい業態の店舗を開発して、数年で複数店舗を展開され力強く事業成長されている方、新商品開発に挑戦して連続的にヒット商品を生み出している方、新しいサービスを開発して躍進している方など、事業規模は小さいものの、「想い」をしっかりと形にして、新しい売上を生み出しています。
結局、冒頭で紹介した個人事業主の方は、
「受託事業は、競合の参入もあり、どんどん厳しくなっていきます。やはりあきらめずに新しいことに挑戦しないと未来がないと思います。」
そうおっしゃって、もう一度、市場に向き合った戦略を一緒に見直していくことになりました。
この方も、強い「想い」があり、新しいサービスは、目の付け所はよかったのですが、お客様視点に立った見方や、市場でのポジショニングの設定などがうまくできていませんでした。「想い」は強かったのですが、戦略面においては、根本的な見直しが必要でした。しかし、最後まであきらめないという強い「想い」をひしひしと感じますので、きっとカテゴリーキラーを生み出して躍進されていくと思います。
強い「想い」を持って、潜在化ニーズの市場に挑戦することは素晴らしいことですが、安易に潜在化ニーズを追うよりも、既存事業でまだまだ成長できる場合も少なくありません。
その場合は、現在の市場環境に合わせて既存商品や既存サービスのポジショニングを調整していきます。そうすることで、これまで以上に顕在化ニーズを拾っていける場合もあります。戦略的に競争優位を生み出すのです。現にそのように既存商品やサービスをテコ入れして、カテゴリーキラー化することで躍進されている企業もたくさん存在します。
もし、あなたの会社の新しい取り組みにおいて、顕在化ニーズを狙うか、潜在化ニーズを狙っていくかという点で悩まれている場合は、慎重に判断して欲しいと思います。
以上
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝
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