第68話 メーカー企業を活性化させる方法
「うちの社員が、『進んでやるべき方向性が見えました』と言って、とても前向きになっています」
当社のコンサルティングを受けた経営者からの嬉しいご報告でした。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
これは、あるメーカー企業が、当社のコンサルティングを受けて、自社の戦略を明確にし、その戦略を全社員に向けて説明したところ、返ってきた言葉でした。
前号のコラムでは、「戦略のマンネリが組織に停滞感を生む!」という内容をお伝えしました。まさにこのメーカー企業も、ここ数年そのような停滞感を感じておりました。
そして、この停滞感を払拭するには、戦略を根本から見直す必要があると感じて、当社のセミナーに参加され、その後すぐにコンサルティングを受けられたのです。
当社のコンサルティングは6ヶ月~1年かけて行いますが、このメーカー企業のケースでは、社長と役員が一緒に戦略づくりに挑戦しました。そして、毎回の課題にしっかりと向き合い、真剣に取り組まれました。毎回、その真剣さが、ひしひしと伝わってきました。絶対にやり切って成果を出すという気迫が感じられるプロジェクトでした。
できあがった戦略方針書は、経営者の腹に落ちる、そして明瞭な内容でした。競合がいない、そして自社の強みが最大限に活きる自社独自のカテゴリーキラーを展開していくシナリオがくっきりと描かれていました。ここまで、しっかりと戦略を描いたうえで、新年を迎えたタイミングで、全社員に向けてその内容を説明したのです。
もちろん、戦略をつくったからといって成功ではありません。戦略は、立てた時点では仮説でしかないので、実行して成果を出さなければ意味がありません。
しかし、精度の高い戦略は、字のごとく無駄な戦いを略して、自社が勝てる道筋を示してくれます。これまでも、社長が本気で戦略づくりに挑戦して、精度の高い戦略を導き出し、そして成果を上げる企業を何度も見てきました。
逆を言えば、戦略づくりの精度が低ければ、社員は無駄な戦いを強いられ、見えないところで経営資源を大幅に浪費することになります。
「こっちへいくぞ!」とぐいぐいと引っ張っていき、「やっぱり違うぞ、引き返せ!」と右往左往してしまう会社があります。最初は平気かもしれませんが、この繰り返しを3年、5年といつまでもやっていると、時間とお金がどんどんなくなっていくだけでなく、社員のモチベーションは下がり、組織は弱体化していきます。
社員のモチベーションが下がってくると、組織を活性化するような研修に取り組む会社もあります。いわゆるモチベーションアップのための研修やコンサルティングです。しかし、ここで気をつけなければいけないことは、問題の本質がずれていないかということです。戦略の欠如により疲弊した組織のマインドを上げるには、経営者が必死になって精度の高い戦略を描くしかないのです。
メーカー企業はどうやって組織を活性化すべきかといえば、その本質は、「売れるモノをつくる」ということに尽きると思います。そのための戦略をつくるのです。
「売れるモノをつくる」というのは当然のことですが、ここに難しい問題があります。
それは、何をつくるべきか、ということです。
もちろん、ほとんどのメーカーが特定のジャンルのものをつくっているわけですから、そのジャンルから外れて何でもつくるという会社は少数でしょう。
しかし、その特定ジャンルをよく見ていくと、同じようなモノをつくっている会社がたくさんあることが多いです。
当の会社からすれば、うちは他社にできないモノを作っているという自負があるものの、外から見れば、大して他と変わらない。もっと言えば、つくっているモノに特徴がなく、際立った存在に見えないというケースがあります。
これは、一般消費者向けのモノづくり企業の場合、とにかく手当たり次第に、売れそうなモノを作っていればよいと考えてしまうことが原因です。いろいろと手を広げるうちに、一歩引いてみたとき、存在感のない商品ラインナップになってしまいます。
もちろん、幅広く品揃えしていくというやり方もあるので、それ自体が悪いことではありませんが、しっかりと競合と比較した際に存在感がある立ち位置を意図してつくっているかどうかが重要です。
商品ラインナップやコンセプトに際立ったものが感じられなければ、競合と比較した際に、存在感がなく、バイヤーの頭にも、消費者の頭の中にも残らない会社(=ブランド)となります。このような繰り返しを何年していても、たまたまのヒットはあったとしても、事業として強くなっていくことはありません。
一般消費者向けの商品で市場を創っていこうと思えば、一貫したコンセプトで商品展開をしていく必要があります。
もし、あなたの会社がそのような状況にあるとすれば、個別の商品が売れた、売れなかったという勝負をするのではなく、その商品を束ねる事業体として、どんな立ち位置でブランドを作っていくかという戦略を立ち止まって真剣に考える必要があるのです。
法人向けのモノづくり企業にも同じことが言えます。
自社の強みを活かせる領域はどこか、そして、将来に向けて磨いていくものは何か、そういった長期的な視点で事業として勝負していくべきです。戦略の骨格を意識しながらモノづくりをしていく必要があります。
「お客様から言われたことを何でもやっていく、一生懸命にまじめにモノづくりをするだけ」そういう会社ももちろんあると思います。会社のステージによっては、そのようなことが間違いではない場合も多いですが、少しずつでも、自社の強みが積み重なっていき、利益が取れる領域をつくっていくことが重要です。
そうでなければ、利益が出ないモノづくりは、やればやるほど辛くなっていきます。中長期的に市場で有利に戦えるフィールドを作っていくイメージです。当社のお客様の中にも、法人取引をしているメーカーはたくさんありますが、しっかりと戦略を作りこんで、腰を据えたモノづくりをしている企業は、利益率が高い事業を実現しています。
お伝えしてきたように、もしあなたの会社がメーカー企業であれば、個別の商品企画や、目先の売上に追われるだけでなく、一度立ち止まって、事業戦略のマスタープランをつくるべきです。組織に活気がないと嘆く前に、できれば一人でもやる気がある役員や社員を巻き込んで、一緒に戦略を考えるべきです。
組織に活気がないという場合でも、「本当は、やる気はあるのだけれど、やり方がわからない」「前向きにはやっていきたいと思っている」そういう社員は少なからずいるものです。
そのような人に前向きな話をすれば、きっと理解して一緒に考えてくれることでしょう。そのような前向きな役員や社員と一緒に成果を出すことが何よりの組織活性化につながります。
組織に活気をもたらすためには、まずは、社長が絶対に成果を出すという気持ちで、一歩踏み出して本気で事業の戦略を考えるしかないのです。
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株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝
【追伸】
当社のホームページでは、「お悩み解決事例」を多数公開しています。いずれの事例も、「戦略」をしっかりと描き切り、成功へとつながっていった実例となります。様々な業種の事例を公開していますので、参考になりそうな企業があれば、ぜひお読みください。