第102話 中小メーカーの社長に足りない視点
「これまでは、私の勘だけを頼りに、思いついたことをやってきました。
しかし、なかなか思うように売れず限界を感じています。
次の新しい売上の柱を早急につくっていく必要があります。」
冒頭のコメントは、創業30年以上の雑貨メーカーの経営者からのご相談でした。
同社の販路は、コロナの影響を大きく受けてしまい、売上が大幅にダウンしました。大急ぎで、別の販路開拓をするも、売上回復までには少し時間がかかりそうです。
少し前に比べると、コロナの影響は緩和され、売上も回復傾向にありますが、そこに甘んじていては、またいつ危機に見舞われるか分からないため、新たな市場を開拓していきたいということでした。
今月、当社では、相談会イベントを実施したこともあり、現在、大変多くの会社から相談を受けております。その中でもメーカー企業のご相談は多く、同様の課題をもっている会社は他にも何社かありました。
ある食品メーカーの社長は、
「これまで自分の勘を頼りに商品をつくり、40年以上やってきて、それなりの規模に成長しました。しかし、最近は、昔のように商品が売れず限界を感じています。自分も高齢になり、引退が迫っているのですが、気づいたら後輩が育っていません。社内には売れる商品を生み出す体制がありません。この先が心配です。」
と、お悩みを抱えていました。メーカー企業として、会社の存続を左右する重要な問題です。
雑貨メーカー、食品メーカーに関わらず、自社商品を持つメーカーは、全て、確かなモノをつくる製造技術に加えて、「売れる商品を企画する技術」を高める努力が必要です。
中小メーカー企業の実態として、社長が商品開発をするということは一般的です。本来、メーカー企業の社長は、モノづくりが好きという方が多いですから、自然なことでもあります。
しかし、その体制だけでは、やはり成長に限界があります。私どもの経験では、社長の勘だけを頼りに商品開発をしているメーカーは、ある程度のところで売上が伸び悩み、それを維持することに精一杯で、次の新しい展開に踏み出せない傾向があります。
社長の勘だけに頼って、商品づくりをするメーカー企業の最大の欠点は、売れる商品を生み出すノウハウが社内に構築されないということです。
毎回、なんとなく売れた、売れない、という事実だけを受け入れるだけで、組織に学習サイクルが構築できません。これを何年も続ける経営は、メーカー企業としての頭脳を進化させない経営をしているということになります。
そのような状況は、勘だけに頼って製造をするようなもので、毎回、バラバラの品質の商品を製造しているのと同じです。
そうではく、製造で品質を高める努力をするのと同じように、仮に失敗をしても、次の成功につながるように、「売れる商品を企画する技術」を高めていくことが重要です。
そして、メーカーの経営者が事業承継を考えるときは、確かなモノをつくる技術に加えて、「売れる商品を企画する技術」の向上を目指し、それを後輩に受け継いでいくことに力を入れるべきです。
それができないと、今売れている商品の寿命が尽きれば、そこで会社は終わりになってしまいます。長く勤めてくれた大切な社員も路頭に迷うことになります。
「売れる商品を企画する技術」をしっかりと積み重ねていけば、お客様から選ばれ続ける企業になるだけでなく、積極的に新たな市場に打って出ることもできるようになります。
今回のコロナ禍のような緊急の事態にならずとも、普段からメーカーとして、市場創造の取り組みができるようになります。
余談ですが、実は、私の実家は、かつて小さな食品メーカーを経営していました。そして、私は、大学卒業後に広告業界で大企業のマーケティングのお手伝いをしていましたので、大企業と中小企業の差を肌で感じていました。
その差とは、大企業には、「売れる商品を企画する技術」を社内で高めていこうという意識があり、実践的な取り組みをしていますが、中小企業にはそれが無いということです。
実家の食品メーカーも、まさに、父の社長の勘だけを頼りに商品開発をやっていました。私は、その頃から、中小企業と大企業のこの差を、どうにか埋められないものかと考えるようになりました。
まじめに目の前の仕事をしているだけでは報われない。中小企業も、もっと市場を丁寧に分析して、「売れる商品を企画する技術」を高めていく必要があると強く思うようになっていきました。それが、今の仕事をはじめるひとつのきっかけになっています。
こういうと、中小企業が「売れる商品を企画する技術」を高めるなんて、そんな力は無い!人材もいない!と言う経営者も多いですが、中小企業だからできないのではなく、そういって、向き合わない社長の意識が問題なのです。
そう言い切れるのは、当社のこれまで14年間の経験で、社長が意識を変え、行動を変えて、「売れる商品を企画する技術」を高めて成果を出しているメーカー企業が実際に存在するからです。
一般的に、メーカー企業の創業期は、社長が属人的に商品開発をするしかないでしょう。そのような創業期のメーカーの社長が、当社にご相談に来られることもあります。
いつもそういう社長の話を聞かせて頂くと、情熱を込めて世に送り出していく商品は、大きな可能性を秘めていると感じます。
一方で、ある程度の規模まで成長したメーカー企業は、組織として、「売れる商品を企画する技術」を習得していかなければ、長期的に成長発展していくことは難しいです。
もちろん、小さな規模で、社長が思うようにやっていきたいという場合は例外ですが、社員が30名、50名を超えて、組織として経営している状態であれば、「売れる商品を企画する技術」の習得は必須です。
なぜなら、今回のようなコロナ禍でなくても、一般的に商品にはライフサイクル(寿命)があり、メーカーは、現状を維持しつつも、常に新しいモノを生み出し続けなければならない宿命にあるからです。
そして、社長だけでなく、新しいモノを生み出し続けること、挑戦し続けることに喜びを感じられる組織に成長した会社が、力強く生き残っていきます。
そもそも、どの大企業も、最初は中小企業からスタートしていることを考えれば、分かりやすいと思います。
そのためにも、なんとしても、中小メーカー企業は、組織として「売れる商品を企画する技術」の習得が必要です。
「売れる商品を企画する技術」の習得をテーマとして、当社のコンサルティングを受けるメーカー企業は、少なくありません。
あるサプリメントメーカーは、売れずに困っていた自社商品を売れるカタチにしたいということで、当社の指導を受けました。その商品は、コンセプトを見直しリニューアルすることで、ヒット商品に生まれ変わりました。同社初のカテゴリーキラーになりました。
同社はこれを機に、「売れる商品を企画する技術」の習得を加速させ、その後も当社のカテゴリーキラーづくりの指導を継続して受けたところ、新商品のヒット率が格段にあがりました。
これまでは、新商品を出しても、売れない商品が多く、どちらかと言えば、負け癖がついていた状況でした。
それが一転して、売れる商品を生み出せるようになったことで、自信をもって商品開発をできるメーカーに成長しました。
そして、これまでは、売りに行くのが辛かったと言っていた営業マンも、新商品を売りにいくのが楽しくなったと言うようになりました。
このサプリメントメーカーは、3年後には年商が2倍になっただけでなく、受託製造と自社商品の比率が逆転し、自社商品製造がメインとなるメーカーに生まれ変わりました。
一般的に受託製造は、利益が出にくいビジネスですが、それと比較すると自社商品は、しっかりと利益が出ます。利益が出る自社商品を持つことは、多くのメーカー企業が理想とすることです。
なぜ、このサプリメントメーカーは、そのように生まれ変わることができたのでしょうか。
それは、経営者の意識が、売れるモノをつくる!ということから一歩踏み出して、「売れる商品を企画する技術」を習得しようという意識で努力をしたことに尽きます。
「売れる商品を企画する技術」を習得する必要性は、メーカー企業だけに限らないことはいうまでもありません。全ての企業が、自社の商品・サービスを売っているわけですから、それを売れるモノにしていくという点では同じです。
経験が豊富な社長が、勘を頼りに経営を進めることは必要なことです。一方で、長期目線で会社の成長を考えれば、社長の勘だけに頼らない経営にシフトできれば、安定感が出てきます。
メーカー企業は、ある程度の規模になったら、[社員が積極的に売れる商品を生み出し、商品が売れ、喜びを感じて成長していく]、そのような、理想的な組織づくりに力を入れていくべきです。
自社商品が売れ、利益が出れば、より多くの給与やボーナスなどで社員に還元できるだけでなく、良い人材を獲得する原資も増え、経営は好循環に入っていきます。
社長が新たなビジネス機会を見つけて挑戦したりする余裕も生まれます。また、引退を視野に入れている社長であれば、より安心して引き継ぐことができます。
そういう余裕を持てるメーカー企業に生まれ変わっていくか、または、今までと変わらない経営を続けていくか、新たな年を迎えるにあたって真剣に考えて頂きたいと思います。
今までと同じやり方で、次の売上の柱をつくれますか?
追伸:
今月は、相談会イベントを開催したため、コンサルティングの依頼が増えています。来年からスタートできる会社はあと数社となります。
当社のコンサルティング導入をご検討されている方は、お早めにお問い合わせください。お問い合わせを頂きました順に、仮押さえをさせて頂いております。
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント