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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

【特別コラム】 中小企業の『差別化戦略』大全!価格競争を超えて成長する方法 戦略フレームワークの理解と成功事例から学ぶ

多くの中小企業が直面している経営環境は、かつてないほど厳しいものとなっています。

価格競争の波にのまれ、人件費や仕入れコストの上昇で、収益が圧迫される中、持続的な成長を実現するためには従来の手法を見直す必要があります。

今、重要なのは競争に勝つための差別化です。自社の強みを活かし、他社とは違う価値を生み出すことで、顧客に選ばれる企業へと変革していくためのヒントをご紹介します。

1)なぜ、中小企業に差別化戦略が必要か?

■中小企業において最も優先度が高い経営課題

本題に入る前に、中小企業の経営課題を見ていきましょう。

以下は、2024年版 中小企業白書・小規模企業白書(概要)に掲載されている内容です。

出典:2024年版 中小企業白書・小規模企業白書(概要)P27【テーマ⑮】小規模事業者の経営課題より https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/2024gaiyou.pdf

 

こちらの調査結果をみると、中小企業・小企業の課題は、両者とも「売上不振」「求人難」「原材料高」が主要な課題として共通しています。さらに、両社を比較してみると、その割合に違いが見られます。

中小企業では「売上不振」が29%で最も多い課題となっていますが、小企業はこれがさらに高く、35%と、売上不振がより深刻であることがうかがえます。

また、「利益減少」の割合も小企業で15%と中小企業の9%より高く、利益確保の面で小企業が厳しい状況に直面していることがわかります。

一方、「求人難」に関しては、中小企業が26%であるのに対して、小企業では18%と、中小企業の方が人材確保に苦戦している様子が見受けられます。

 

中小企業は、これらの課題に対応するためにどうしたらよいか、それぞれ考えていきましょう。

売上不振への対応

売上を伸ばすためには、営業強化や販売促進など「売り方」を改善することも有効です。しかし、これには限界があります。

いくら効果的な「売り方」を工夫しても、競合他社より優れた商品やサービスが市場に出回っている場合、「売り方」の工夫や強化だけで太刀打ちするのは困難です。

根本的な解決には、まず競合にない差別化された商品・サービス又は事業を提供することが重要です。これによって、顧客に強く選ばれる独自の価値を生み出し、売上不振を改善していく必要があります。

求人難の解決策 

求人難に対しては、高い給与水準を実現することで人材を惹きつけ、企業の魅力を高めていくことが重要です。

しかし、そのためにはまず利益を確保しなければなりません。利益を安定的に生み出すには、他社との差別化を図り、付加価値の高い商品・サービス又は事業を提供することが欠かせません

差別化により他社と異なる独自の価値を提供し、高利益を確保できれば、社員に対する待遇も向上し、求人難の改善につながります。

原料高への対応 

原材料費の上昇に対する対策としては、仕入れ先の見直しや交渉の他に、価格の引き上げが考えられますが、それには限界があります。また、単に価格を上げるだけでは顧客離れのリスクを伴います。

そこで、差別化された高付加価値の商品やサービスを提供することが必要です。付加価値を高めることで、単なる値上げではなく、顧客にその価値を納得してもらえる価格設定が可能になり、原材料高の影響を緩和できます

利益減少の克服

利益減少は、売上不振や原材料高、さらには人件費の上昇など多くの要因が重なる結果です。特に、競争激化による価格競争の中で、利益を出し続けるのは容易ではありません。

こうした状況下で利益を守るためには、競合他社が追随できない独自の価値を持つ商品やサービスの提供が必要です。これにより、価格競争から脱却し、高利益を確保する道が開けます。

 

上記の課題はすべて、競合他社との差別化が鍵であることが共通しています。競争の激しい市場で中小企業が持続的な成長を遂げるためには、ただのコスト削減や営業手法の改善だけでは限界があるのです。

競合他社を圧倒するような差別化戦略を取り入れ、顧客に選ばれる独自の商品・サービスを提供することで、持続的な利益を確保し、各課題の克服につながります。

 当社では、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業を、「カテゴリーキラー」と称して、中小企業においてカテゴリーキラーを持つ経営を推奨しています

2)差別化戦略とは何か?

差別化戦略とは、競合他社にはない独自の価値を顧客に提供し、選ばれる企業になるための戦略です。

中小企業にとって、差別化は特に重要です。価格競争に巻き込まれるのではなく、企業独自の強みを活かして、他社に真似できない価値を提供することで顧客に選ばれる存在になります。

このような差別化された商品・サービス・事業は、やがて市場での圧倒的な地位を確立し、競合他社を圧倒する「カテゴリーキラー」へと成長していきます。

「カテゴリーキラー」は、特定の分野や市場で独自の価値を提供することで、他社が追随できない強力な存在となることを意味します。

3)中小企業にとっての競争戦略の重要性と選択肢

■マイケル・ポーターの「競争戦略」

中小企業が差別化を成功させるためには、どのようにして競争の中で優位性を持つかを明確にすることが不可欠です。

そのため、マイケル・ポーターが提唱した「競争戦略」のフレームワークは、差別化戦略を考える上で有効な手法の一つです。

ポーターの理論は、企業が限られたリソースでどのように競争優位を確立できるかを示すものであり、中小企業の戦略設計に役立ちます。

 マイケル・ポーターの競争戦略のフレームワークには、次の3つの戦略があります。

 

・コストリーダーシップ戦略:低コストで競争優位を築く戦略。

・差別化戦略:他社とは異なる価値を提供して、競争優位を確立する戦略。

・集中戦略:特定のニッチ市場に特化し、その分野で優位を築く戦略。

 さらに、この中で、集中戦略は、コスト集中戦略と差別化集中戦略に分かれます。

コスト集中:特定市場で低コストにより価格優位を目指す戦略。

差別化集中:特定市場で独自の価値を提供し差別化を図る戦略。

 図にすると以下のようになります。

このように、集中戦略を「コスト集中戦略」と「差別化集中戦略」に分けると、全体で4つの戦略になります。

この4つの戦略のうち、どの戦略が中小企業に向いているか、ひとつひとつ見ていきましょう。

①コストリーダーシップ戦略

業界全体で最も低いコストで競争優位を築く戦略です。

中小企業は規模が限られているため、大量生産や大量仕入れといった「規模の経済」を活かすことが難しく、資金力のある大企業と低価格競争をするのは現実的ではありません。

②差別化戦略  

業界全体で他社と異なる価値を提供し、競争優位を築く戦略です。

中小企業でもこの戦略は一見魅力的ですが、業界全体に広がるブランド力や独自のイメージを確立するためには、多大な資金やリソースが必要です。

広い市場に対応しようとすると、限られた資源での対応が困難になります。

③コスト集中戦略

「コスト集中戦略」は、特定市場で低コストを実現し価格優位を図る戦略ですが、これには中小企業にとって多くのリスクが伴います。

価格競争に巻き込まれることで、利益率が低下しやすく、資源が限られた中小企業にとっては、必要な利益を確保することが難しくなります。

また、コストを抑えるための大量仕入れや効率的な生産体制が求められるため、これを実現するには相応の資本が必要です。

さらに、価格を競争力の中心に置くと、他社がさらなる低価格を打ち出した際に対抗策が限られ、持続的な競争力を保つのが困難です。コスト面においても、材料費や人件費の上昇に左右されやすく、経営の安定を維持するリスクも高まります。

④差別化集中戦略

最後に、中小企業に適していると考えられるのが「差別化集中戦略」です

この戦略では、特定のニッチ市場や限られた顧客層に特化し、独自の価値を提供して差別化を図ります。

中小企業は規模が小さい分、顧客のニーズに柔軟に対応しやすく、専門性を活かして独自の価値を提供できます。

このため、顧客が価格ではなく価値を基準に選ぶようになり、他社と直接競争することなく、安定した顧客層と利益を築くことが可能です

中小企業は、差別化集中戦略において、カテゴリーキラーを生み出しやすくなります。

日本市場における自動車業界の例

この4つの戦略を、日本市場における自動車業界で見てみましょう。

(実は時代によって、この4つの戦略に該当するメーカーも変わります。また私見も入りますので、あくまでも4つの戦略のおおよそのイメージをつけるためのものとご理解ください)

①コストリーダーシップ戦略

この戦略を取るのが言わずと知れたトヨタです。

「カイゼン」と「ジャストインタイム生産方式」で生産を極限まで効率化し、コストを削減していきます。

ただ必ずしもコストリーダーシップ戦略は、低価格で販売するということではなく、あくまでも低コストで自動車を製造できるということに強みがあります。

商品によっては販売価格の高いものもあり、高い利益率を誇ります。

そのため、競合が同じような商品コンセプトの自動車をぶつけ、価格でくぐってきても、対抗して価格を下げることも可能で、価格競争力が高いことも、また、この戦略の特徴でもあります。

幅広い製品ラインナップで、幅広いターゲット層に訴求していくフルライン戦略をとります。

②差別化戦略

トヨタの対抗軸として、かつて国産メーカーで、この戦略を取ってきているのが、ホンダや日産が挙げられるでしょう。

しかし、現時点で大きな差別化があるかと言えば、あまり、そのような印象が薄いかもしれません。

かつて、ホンダはトヨタに先駆けてF1などに参戦し、そのエンジンの開発力などで、トヨタよりも強みを発揮し、差別化を行ってきましたが、今や、一般消費者からすれば、大きな違いを感じられなくなってきているように感じます。

また、日産も、良くも悪くもカルロスゴーンの時代は調子がよかったのですが、現在は、勢いがないようにも見受けられます。世界に先駆けて量産開発した電動自動車リーフは、強力な差別化軸であったはずなのですが、今や自動車のデザイン力やブランディングのまずさで、テスラの後塵を拝してしまっているのは残念です。

むしろ日本市場では、外資系自動車メーカーである、ベンツ、BMW、アウディあたりは、そのブランド価値を高めていくことで、比較的、高級車としての幅広い製品ラインナップで差別化戦略を取っている印象があります。

③コスト集中戦略

この戦略に該当する一番わかりやすい自動車メーカーと言えば、スズキが該当するでしょう。

軽自動車に特化し、生産効率を上げていく中で、コスト競争力を持ち、日本市場のみならず、昔からインドの自動車業界でも、大成功を収めている代表企業です。

④差別化集中戦略

この戦略にフォーカスしている企業を挙げるとすれば、国産メーカーであれば、ロータリーエンジンを擁するマツダが挙げられるでしょう。

しかし、トヨタとの業務資本提携を経て、今後は、どのような戦略を展開していくのかわからないところです。

その他にも、個性的なデザインで展開している、光岡自動車が挙げられます。

むしろ、この差別化集中戦略でわかりやすいところとして、外資系自動車メーカーのほうがイメージしやすいかもしれません。

例えば、フェラーリ、ポルシェ、ロールスロイスあたりは、超高級車として君臨しています。また、電気自動車の代名詞となったテスラは、当初は高級電気自動車として、この戦略をとっていました。

しかし、だんだんとラインナップを広げ、比較的、低価格帯のものを売り出すことで、②の差別化戦略に移行しつつあるのかもしれません。

(自動車メーカーの例でお伝えすると、この差別化集中戦略は、超高級なものが該当する印象を与えてしましますが、本質的には、あくまでも特定のターゲットを明確にして、そのターゲットのニーズに合い、かつ競合との差別化があるという戦略となります)

 

以上、この4つの戦略を日本市場における自動車メーカーの例で見てきましたが、大切なことは、まず大きな視点で、自社にふさわしい戦略を選択し、さらにその中で強みが活きる差別化された商品・サービス・事業を展開して、しっかりと利益が出る経営を実現することです。

その中でも、繰り返しになりますが、中小企業の差別化戦略を考える時、マイケル・ポーターの考え方にあてはめると、4つの選択肢のうち④の「差別化集中戦略」が最も適しています。

当社は、過去17年間で300社以上の中小企業の差別化戦略の構築をお手伝いしてきましたが、この考え方が最も現実的だと考えます。

 

「差別化集中戦略」は、特定市場で独自の価値を提供し差別化を図る戦略です。

この「差別化集中戦略」の考え方にもとづいて、戦略を構築していくことで、中小企業でも競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業である、「カテゴリーキラー」をもった、収益性の高い事業が実現します。

 この「差別化集中戦略」に基づいた「カテゴリーキラー」を生み出した実例として、これまで当社がコンサルティングで手掛けてきたものを、本コラムの後半でいくつかお伝えしますので、参考にして頂ければと思います。 

4)自社の強みを見つける

中小企業におけるSWOT分析の活用について

中小企業が、「差別化集中戦略」の考え方に基づいて、差別化を成功させるためには、まず自社の強みを明確にする必要があります。

競合他社が提供できないリソースやスキル、技術、サービスを活かすことで、他にはない価値を生み出すことが可能です。

この強みこそが、将来的に「カテゴリーキラー」となる商品・サービスまたは事業の基盤となります。

 一般的には、自社の強みを見つけるためには、SWOT分析を活用することが効果的とされています。

SWOT分析は、企業の状況を把握し、戦略を立てる際に活用される基本的なフレームワークです。SWOTは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。

 

  •  S:Strengths(強み)

企業や製品が他社に対して優れている点や、自社の強みとなる資源・能力のことです。例として、技術力、ブランド力、優れた人材などが挙げられます。

  • WWeaknesses(弱み)

企業や製品が抱える課題や改善が必要な点を指します。強みの裏返しであったり、競合と比較した際の劣位となる部分が該当します。例として、資金不足、技術力の遅れなどがあります。

  • O:Opportunities(機会)

企業にとって有利に働く外部環境の要素です。市場の成長や新たな顧客ニーズ、技術革新など、企業の成長や強みの活用につながるチャンスが挙げられます。

  • T:Threats(脅威)

企業にとって不利に働く外部環境の要素です。市場の縮小、競合の台頭、規制強化など、事業のリスク要因となり得るものが該当します。

     

    この4つの視点から自社の現状を整理し、戦略立案や課題の把握に役立てるのがSWOT分析です。

    そして、このSWOT分析は、書籍やインターネット上の記事など、いろんなところで強みの分析ツールとして紹介されています。

    しかし、実際に中小企業が「強み」を分析しようと考える際に、あまり実践的ではありません。

    その理由は、2つあります。1つは、一見、整理しやすいようで、この項目を埋めていけば、それっぽい分析をしたように見えることで、何か戦略を立てた気になってしまうことです。

    しかし、4つの象限を整理しただけでは、具体的なアクションプランにはつながりません。

     もう1つの理由は、主観的な観点でのみ、4つの象限に分類してしまうことです。

    以前、ある経営者が、ある団体が主催している経営戦略講座に参加し、その中で行った、SWOT分析のアウトプットを見せてもらったことがあります。

    その講座では、基本的には研修形式で、講師による各参加者への個別具体的なフィードバックもなく、その経営者の主観で整理されていたのですが、そのアウトプットの質の浅さに驚いたことがありました。

    経営戦略を学習するという目的でそのような講座に参加するのであれば良いのですが、それを会社に戦略として落とし込み、社員を巻き込んで実行する、といった前提で戦略を構築しているとすれば、その浅いアウトプットではうまくいかないことを指摘しました。

     

    この4象限(強み・弱み・機会・脅威)のうち、当社で特に大切だと考えているのが、強みの分析です。これを徹底的に検証していくスタンスで取り組みます。

    特に、弱みにはあまりフォーカスすることはお勧めしません。 

    理由としては、たとえば、社員10名の小さな製造業の会社が、社員数が少ないことを弱みとしていたとき、これは、大量生産に対応できないという点では弱みになりますが、小ロットの個別のオーダーに応えていこうとしたときに、お客様の要望を聞いて、丁寧な対応をできるという点では強みになります。

    つまり、どんな市場にどのような商品・サービス・事業を展開していくかを前提にしないと、強みや弱みは特定できないということです。

    実際に戦略を構築する際には、自社の強みと弱みではなく、強みのみにフォーカスをして、徹底的に抽出していき、さらにその強みを活かせる市場を探していくというプロセスを踏むことが現実的です。

    SWOT分析を先にやって、弱みと決めつけてしまうと、そこから、戦略を構築していく際に、大きな見落としをしてしまうことがあるので注意が必要です。

    中小企業の「強み」を分析する3ステップ

    強みを分析していく際にやっていく作業は、大きく以下の3つのステップになります。 

    1. 自社内で考え得る強みを徹底的にあらいだす。

      • できるだけ社内の多くの人を巻き込んで作業をすることがポイントです。
      • 幹部社員や社歴が長い人だけで議論すると、大切な強みを見過ごすことがあります。たとえば、最近入社した方などは、ある意味で外部の人に近い存在です。そのような人がなぜ、自社を選択したかを聞くと、競合と比較した強みなどが見えてくることがあります。
    2. お客様を中心として社外の意見を聞き出す。

      • 自社内で多くの強みを出した段階で、一歩引いて社外の人の意見を聞くことはとても重要です。特にお客様は、競合企業と比較して、自社の商品・サービスを選択していますから、強みがよく見えているケースが少なくありません。
      • 大切な事は、自社の強みを決めつけず、入念に情報収集をして、検証することです。
    3. 会社が目指す方向感を踏まえて強みを明確化する。

      • 上記1と2で集まった情報から、自社の強みを明確化していきます。その際に、今後どのような方向で事業を展開していくか、大きな方向性が決まっていることが重要です。その方向性次第では、既存の強みだけでは、戦えないことがあります。そういったことを明確にすることも大切です。
      • 例えば、BtoBで受託の製造をやっていた会社が、今後は受託を脱却して自社商品で売上を立てていきたいと考えたとします。そのような方向で展開していく場合には、市場創造する力、すなわちマーケティング力が問われます。こういった場合は、今後強化する強みとして、「マーケティング力」が位置づけられます。

     

    繰り返しになりますが、中小企業が差別化を図り、カテゴリーキラーを生み出すためには、あらゆる角度から、自社の強みについて検討して、もれなく、徹底的に抽出していくことが基本となります。そこから市場機会を見出していきます。

    5)差別化の軸となる要素

    差別化の軸となる要素は、次のようなものが一般的です。

    商品・サービスの独自性:品質や機能、技術など

    もっとも基本的な差別化の考え方です。特に中小企業は、商品・サービスそのもので差別化を図ることが重要です。

    受託事業の場合は、提供する事業そのものを商品と捉えて、差別化をしていく発想が必要です。

    売り方や、デザインなどの見せ方で差別化する考え方もありますが、それは他社も容易に真似しやすいことが多いため、長期的な差別化としては相応しくありません。

    自社の強みを徹底的に分析したうえで、競合他社が容易に真似できない差別化の軸を検討していくことが、カテゴリーキラーづくりの基本です。

    サービスの充実:パーソナライズされた顧客対応やアフターサービス

    前述の「商品・サービスの独自性」の領域とも関連しますが、中小企業がとるべき「差別化集中戦略」においては、大手の競合他社が参入できない領域で、付加価値を高めていくことが基本です。

    その際に、パーソナライズされた顧客対応やアフターサービスを追求していくことは有効です。「商品・サービスの独自性」を高めることにつながります。

    仕入れ:専属契約などによる特別な仕入れ

    こちらも、前述の「商品・サービスの独自性」の領域と関連しますが、質の高い原材料などを専属契約によって、競合他社よりも有利に仕入れることができれば、「商品・サービスの独自性」を高めることができます。

    しかしながら、専属契約を成立させるためには、相応の購買量を求められる可能性が高いため、現実的には、他社に先がけて仕入れることに留まるケースがほとんどです。

    その後、当該商品が大きな売上を上げて、業界内で目立ってくれば、すぐに多くの競合他社が参入してきます。

    また、なんらかの理由によって、突然契約を打ち切られるようなことがあれば、大きな痛手を負う事にもなります。

    従って、繰り返しになりますが、中小企業は、自社の強みを徹底的に分析したうえで、競合他社が容易に真似できない差別化の軸を慎重に検討する必要があります。カテゴリーキラーづくりの基本です。

    特定の販路:競合他社が参入していない、もしくは参入が困難な販路などの構築

    まだ競合他社が参入していない分野で、商品・サービスを展開することができれば、差別化につながります。

    しかしながら、いずれ競合他社が参入してくることを考えると、やはり、「商品・サービスの独自性」を第一に検討していく必要があります。

    また、販売先との契約によって、競合他社が参入できない状況を生み出すことができれば、有利な展開も可能ですが、その契約を実現するためには、「商品・サービスの独自性」の強いことが前提になるでしょう。

    もし、独自性のある販路を構築したとしても、自社より優れた商品・サービスが参入してくれば、その販路は奪われていきます。

    当社に相談に来られる会社の中にも、特定市場で圧倒的なシェアを持っていた会社が、競合他社の新商品によってどんどんシェアを奪われてしまい、数年で売上が大幅ダウンとなってしまったというような事例が、たびたびあります。

    そうならないためには、常に顧客ニーズを捉えて、商品・サービスまたは事業を進化させていく姿勢が問われます。

    プロモーション:新しい販売方法や売り方

    プロモーションとは平たく言えば「売り方」です。「売り方」は、よほど時間をかけて構築した手法や、独自のノウハウがあれば別ですが、基本的に「売り方」は、再現性が高いため、他社が真似をしてくれば、差別化はすぐに打ち消されてしまいます。

    やはり、中小企業は、自社の強みが効いた「商品・サービスの独自性」を追求し、継続的に高めていくことで、より高い参入障壁を築いていくことが大切です。収益性の高い事業を実現させる大きなポイントです。

    もちろん、「売り方」の強化は大切ですが、課題のレイヤーとしては、「商品・サービスの独自性」の追求を一番にするべきということです。

     

    このように、差別化の軸を考える時には、いくつかの視点がありますが、中小企業が第一に考えるべきことは、「商品・サービスの独自性」を第一に追求することです。この選択を間違えると、痛い目にあう事が少なくありません。

    理由は、自社が売り方やプロモーションに気をとられている間に、その間に競合他社は、商品・サービス・事業を進化させていくからです。

    そして、ある日突然、競合企業の強い商品・サービス・事業が目の前に現れたとき、小手先の売り方やプロモーション手法では太刀打ちできず、撤退を余儀なくされてしまいます。

    そうならないためには、日ごろから商品・サービスの独自性を追求し、カテゴリーキラーを生み出し、強化していく必要があります。

    商品・サービスの独自性を追求するためには、顧客分析が特に重要になりますが、そのことも含めたステップについて、7)の差別化戦略の実践方法でお伝えしていきます。

    6)差別化戦略のメリット

    差別化戦略を採用してカテゴリーキラーのある経営をしていくことで、多くのメリットを享受できます。

    •  価格競争を回避:他社にはない価値を提供することで、価格競争に巻き込まれない経営が実現します。
    • 顧客ロイヤリティの向上:独自の価値を提供することで、顧客がリピートし、ブランドに対するロイヤリティが高まります。
    • 競争優位性の確立:競合他社が簡単に模倣できない商品やサービスを提供することで、強力な競争優位を築けます。
    • 収益性の向上:競合他社ができない領域で、付加価値を提供することで、高い利益率を実現させることができます。
    • 離職防止や人材採用の強化:高い利益率は、高い水準の給与を支払うことが可能になり、離職防止や人材採用の強化につながります。
    • 会社の認知向上:差別化戦略を採用してカテゴリーキラーのある経営をすることで、業界内外で、会社の認知が向上します。

     7)差別化戦略の実践方法

    差別化戦略を実践するためには、次のステップが効果的です。

     

    1. 自社の強みの明確化

      • 自社のリソースや技術を基に、差別化可能なポイントを見極めます。
    2. 市場調査

      • 顧客のニーズや競合他社の動向を調べ、どこに差別化のチャンスがあるかを見つけます。
    3. ターゲット市場の特定

      • 強みが活きる分野を特定して、その分野における商品・サービス又は事業の展開可能性を検討します。
    4. 差別化の軸を決定

      • 当該市場における顧客ニーズ調査、競合調査などを踏まえて、品質や機能、技術など、どの部分にフォーカスして差別化をするか、より具体的な検討をして、商品・サービス又は事業の独自性を追求します。
      • 最終的には、競合他社との違いをポジショニングマップとして整理します。
    5. 実施計画の作成

      • 具体的なアクションプランを策定し、段階的に実行していきます。
    6. フィードバックと改善

      • 顧客からのフィードバックを収集するなどして、戦略を修正・改善します。

     

    このように進めることで、競合を圧倒する強い差別化のある商品・サービスまたは事業、すなわち「カテゴリーキラー」が生まれます。

    8)差別化戦略におけるリスク管理

    差別化戦略には、リスクも伴います。例えば、独自の価値を提供する過程で市場のニーズが変化する可能性や、競合他社が類似の戦略を模倣するリスクがあります。

    こうしたリスクを最小限に抑えるために、市場の動向や競合他社の動きを常に注視し、柔軟に対応する姿勢が求められます。

    また、特定のターゲットや特定のニーズのみに依存しすぎると、そのニーズが変化した際に対応できないというリスクもあります。

    このようなリスク管理を適切に行いながら、差別化を進めることが、長期的に成功する「カテゴリーキラー」を育てるための鍵となります。

    9)具体的な「中小企業の差別化戦略」成功事例 

    以下は、当社のコンサルティングを受け、競合との差別化に成功し、カテゴリーキラーを生み出して、顕著な成果を上げた企業の具体例です。

    事例1:『受託事業からの脱却』に向けた差別化商品の開発

    株式会社アックスヤマザキ(家電製造業/大阪府)

    コンサルティング前のお悩み 同社はミシン専業で、市場縮小していく業界に不安を抱えていました。また、受託製造を中心とした事業で、価格競争が激化し、利益が思うように上がらない状況が続いていました。自社商品開発に取り組むも、ヒット商品を生み出せずに苦戦していました。
    コンサルティングで実施した内容 顧客へのヒアリングを通じて、特定の利用シーンに強い需要があることを確認。その利用シーンに合わせた機能に絞り込み、カテゴリーキラー商品の開発を行い「子育てにちょうどいいミシン」を生み出しました。
    コンサルティング後の変化 開発したカテゴリーキラー商品は、当初の販売目標の3倍以上の受注を達成。年商は1年で4億円から10億円超に増加。その後も5連続でヒット商品を生み出し、著名メディア各社からの取材を受けるようになり、会社の認知度が向上。入社希望者も増加しました。

    事例2:『新規の販路開拓』を強化するための差別化戦略

    ベストプラネット株式会社(食品製造業/愛媛県)

    コンサルティング前のお悩み 社長以外で新規販路開拓ができる人材が不足しており、経営の将来に不安を抱えていました。
    コンサルティングで実施した内容 営業力強化の前に営業マンに武器(カテゴリーキラー)を持たせる必要性を指摘。自社の受託事業の強みを分析し、「日本唯一の乾物総合ファクトリー」として、顧客にわかりやすく明文化しました。また、パンフレットとホームページを改善し、新規開拓に特化した営業トークの訓練を行いました。
    コンサルティング後の変化 ホームページからの問い合わせ数が大幅に増加し、営業マン全員が新規開拓に対応できる組織に変化。年商10億円の事業が1年で5億円の新規売上増を実現しました。

    事例3:『得意技術を活かして』専門性を強化した差別化戦略

    株式会社モリチュウ(鋳物製造業/埼玉県)

    コンサルティング前のお悩み 同業界において、さまざまな顧客ニーズに応えることはできるものの、カテゴリーキラーといえるものがなく、総花的な印象になっていました。新規開拓につながるカテゴリーキラーの創出が大きな課題でした。
    コンサルティングで実施した内容 自社の技術力を再評価し、他社にはない独自の強みを明確化しました。さらに特定の市場ニーズに応える差別化サービスを開発し、「ステンレス鋳物のプロ」として、専用パンフレットやウェブサイトで効果的に訴求しました。
    コンサルティング後の変化 自社の強みが顧客に伝わるようになり、受注件数が大幅に増加。コンサルティングに参加した社員も大きく成長し、当該事業を任せられるようになりました。

    事例4:『苦戦する新規事業』立て直しのための差別化戦略

    株式会社テオリアハウスクリニック(ハウジングサービス業/東京都)

    コンサルティング前のお悩み BtoCサービスの開発に多額の投資を行ったものの、顧客獲得が進まず売上に結びつかない状況でした。
    コンサルティングで実施した内容 市場調査と仮説検証を通じて差別化軸を設定し、競合にはない強みを活かしました。「シロアリ1番」という自社ブランドを創出し、ホームページとパンフレットを全面改定しました。
    コンサルティング後の変化 ホームページからの注文が増え、売上が前年比3倍以上に成長。社員の戦略構築スキルも向上し、コンサルティングで習得したノウハウを応用して、別の新規事業でも成功を収めました。

    事例5:『モノ売りからコト売り』で価格競争脱却の差別化戦略

    株式会社小池勝次郎商店(農業資材卸売業/埼玉県)

    コンサルティング前のお悩み 大手競合の進出により、地元商圏で価格競争が激化し、売上、利益が低下。販路や顧客層の拡大も進まず、経営に不安を抱えていました。
    コンサルティングで実施した内容 自社の強みを徹底的に分析し、これまでのモノ売りから脱却して、コト売りへのシフトを促進しました。具体的には、農業生産のアドバイスを売りとした「ネギ参謀」と名付けた新サービスを開発。ホームページやパンフレットを刷新し、SNSなどを活用して広く発信していきました。
    コンサルティング後の変化 数年で、地元の商圏を超えて、取引先が全国47都道府県に拡大しました。オンラインショップの売上も前年比200%増に。価格競争から完全に脱却し、安定した経営基盤を構築しました。

    事例6:『待ちの営業から攻めの営業への転換』させた差別化戦略

    株式会社チュウセツシステム(通信工事サービス業/広島県)

    コンサルティング前のお悩み 待ちの営業が中心で、攻めの営業ができない経営に不安を抱えていました。競合との差別化ができる武器(商材)を持つことが大きな課題でした。
    コンサルティングで実施した内容 介護施設向けに特化したICT化サービスを開発。プランをパッケージ化し『介護施設“丸ごと”ICT化パック』として専用パンフレットやウェブサイトを立ち上げ、サービス提供を開始。顧客視点の提案を実施しました。
    コンサルティング後の変化 販路拡大と認知度向上に成功し、新規受注が当初目標の2倍に増加し。売上と利益が設立以来の最高額を記録しました。

    事例7:競合の進出で『経営難に陥った飲食店』の差別化戦略

    ラーメン専門店 香華(飲食業/群馬県)

    コンサルティング前のお悩み 全国展開している大手競合店が近隣に進出したことにより、売上不振に陥っていました。特に地元の若者層の顧客が減ってしまい、今後の経営に大きな不安を抱えていました。
    コンサルティングで実施した内容 競合と比較した自社の強みを「地域密着の店」と位置付け、カテゴリーキラーの開発を行った。その際、新商品を開発するのではなく、既存の商品に着目した。固定客に大好評だった「特性ラーメン」を「元祖みなかみラーメン」と命名して、同店のカテゴリーキラーとして大きく打ち出していきました。
    コンサルティング後の変化 続々と新規客が来店するようになり、売上は前年比150%を達成し経営はV字回復しました。

    10)まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    今回の特別コラムでは、中小企業が直面する経営課題を乗り越え、持続的な成長を実現するための「差別化戦略」について具体的な成功事例を交えて解説いたしました。

    差別化戦略の核となるのは、自社の強みを徹底的に分析し、競合他社にはない独自の価値を顧客に提供することです。

    その結果、他社との価格競争に巻き込まれることなく、収益性の高い事業運営を可能にする「カテゴリーキラー」を生み出すことができます。

    本コラムの後半に取り上げた実例は、すべてこの考え方に基づき成功を収めた企業の取り組みです。

    中小企業が持続的に成長し、厳しい市場環境を勝ち抜くには、明確な戦略と実行が欠かせません。

    本コラムが、中小企業でご活躍の経営者の皆様の今後のヒントやアイデアとしてお役に立てば幸いです。

    11)中小企業の「差別化戦略」を学べるセミナー ※収録動画・90分

    差別化戦略を追求して、カテゴリーキラーを生み出そうとお考えの経営者にむけて開催したオンラインセミナーです。当日は、全国から様々な業種の経営者300名の方々にご参加頂きました。今回は特別に、本コラムをお読みいただいた方に、このセミナーの収録動画をご用意いたしました。

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    セミナー名:中小企業の業績を上げる「カテゴリーキラー戦略」

    対象:中小企業の経営者

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    主催:インクグロウ株式会社

    以下に該当する同業および同業に準ずる方は、ご提供いたしかねますので、ご遠慮ください。

    ※経営コンサルティング/マーケティングコンサルティング/セールスコンサルティング/広告代理店/広告制作・デザイン制作/販売促進/WEBコンサルティング/ブランディング等のクライアントサポートビジネスを行っている方

     

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    株式会社ミスターマーケティング

     代表コンサルタント

                                                           村松 勝