第112話 ものづくり企業が「法人営業」を加速させるために、最初にやるべきこと
「ここ数年コロナ禍で売上が落ち込み、法人営業を強化していますが、まだまだこの先が心配です。
法人営業をもっと伸ばしていくためには何をしたらよいでしょうか?」
冒頭のご相談は、年商で5億円ほどの規模のものづくり企業です。コロナの影響を受けて苦戦するも、なんとか法人営業を強化して、売上は少し回復できたそうです。
しかし、以前の状態に戻るまでは届かず、また、ターゲット企業や提案する商品も、いろんな方向に挑戦しているので、効率の悪さが目立ってきました。
新しい取引先から売上が上がるものの、いずれも少額で、これを繰り返していて本当に良いのか。自社にとっての最適なやり方、戦略は違うのではないかという疑問が湧き、当社に相談に来られました。
当社のコンサルティングを受けられる企業は、年商数千万円から大きくても50億円ほどの売上規模の中堅・中小企業です。
業種は多岐に渡っていますが、社歴が50年、100年と長いものづくり企業は、比較的多くいらっしゃいます。そのような社歴が長いものづくり企業で、散見されるケースは、何がウリなのか、よく分からなくなっていることです。
これは、長い歴史の中で、様々なお客様の色々なご要望に応えてきたことで、あれもできる、これもできるという状態になっていることが原因です。
ご要望を頂いたお客様に喜ばれて、売上につながっていることはとても良いことですが、一方で、新規のお客様から見ると、何がウリか分からない会社になっていたり、ひどいときは、何屋かもよく分からないという状況を招いていることもあります。
このことは、ものづくり企業に限ったことではなく、多くの企業が陥りがちなことです。たとえば、飲食店で言えば、メニューが増え続ける。卸売業や小売業で言えば、取り扱い品目が増え続けるなどです。
特に法人営業を行っている会社は、お世話になっている顧客企業の要望は、簡単に断ることができず、どうしてもそのような状況を招きがちです。
戦略的に意図して取扱商品やサービスを増やしているのであれば問題ありませんが、そうでなければ、多くの場合、価格競争に巻き込まれたり、新規の顧客が獲得できなくなったりという状況に陥ります。
原因は、商品・サービス、または事業そのものが、業界の中で埋もれてしまっていることです。
かつては、自社の「ウリ」があった会社も、時代と共にお客様のニーズが変化したり、競合の参入が徐々に増えていったりして、その「ウリ」が弱まってしまい、売上が停滞している会社からもよくご相談を受けます。
そのような状況にある会社も、結果として現在は、業界の中で埋もれているということになります。
このような状態から脱していくためには、まずは、自社が誇れるカテゴリーキラーを、何としてもひとつ生み出す必要があります。
冒頭に「法人営業をもっと伸ばしていくためには何をしたらよいでしょうか?」という質問がありましたが、同社がこれから法人営業を強化していくためには、何よりも最初に、法人をターゲットとしたカテゴリーキラーをつくることが重要です。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する、差別化された強い商品・サービスまたは事業のこと
もともと、カテゴリーキラーがなかった会社は、売上が下がってきたからといって、焦って、あれこれと手を出す前に、今の自社にとって最適なカテゴリーキラーは何かを徹底的に考える必要があります。
あれこれ手を出してみることが決して悪いことではないですが、じっくり時間をかけて5年、10年と取り組むのと、単発的に1年、2年程の期間でやってみるも、思うようにいかない、ということを繰り返すのでは、長期で大きな差が開いていきます。
特に、法人営業は、成約までに時間がかかるケースが多く、種をまいて刈り取るまでの期間もしっかりと考慮するべきです。
つまり、自社が向かう方向性をあれこれと変えていると、せっかく興味を持って頂いていたお客様が、例えば1年後になんらかのタイミングで問い合せをしようという気持ちになったときに、そのチャンスを逃してしまいます。
こうなると、企業にとって一番大切な信用が積み上がっていきません。もちろん、テスト的にいろいろやってみるということは良いことですが、長期で会社を繁栄させていくための基本は、ものづくり企業として、自社が誇るカテゴリーキラーを定めて、じっくりと市場を開拓していくことです。
そして、毎年コツコツと実績を積み上げていくことで、信用も積み重なっていき、競合との差別化も大きくなり、結果として、成約率は年々上昇し、利益がしっかり出る事業になっていきます。
カテゴリーキラーをもち、しっかりと利益が出る事業を展開している会社は、安い仕事に振り回されることはありません。
そして、時間と資金に余裕が生まれます。この余裕が次のカテゴリーキラーを生み出す源泉になり、経営は好循環になっていきます。
では、ものづくり企業がどのような視点で、最初のカテゴリーキラーを生み出せばよいかということになりますが、当社が、過去にものづくり企業のカテゴリーキラーづくりでお手伝いさせて頂いた例をいくつかご紹介したいと思います。
1.売れなかった特定商品を見直して、カテゴリーキラー化
ある老舗の雑貨メーカーは、売れなくて悩んでいた商品をなんとか、売れるようにするために、市場を再検証して、カテゴリーキラー化に取り組みました。そして、これが大成功し、大きな売上を生み出し、会社の業績をV字回復させました。
雑貨を扱う全国の企業から注文が殺到する状況が続いたため、売上が大きく上がったのはもちろんですが、メディアにも多数取り上げられて会社の知名度も上がりました。
さらに、大手企業を辞めて、同社に入社を希望する若い方がくるようにまでなりました。
ものづくり企業で、誇れる「自社商品」を持ちたいと考える経営者は少なくありません。特に想いを込めて開発した商品が売れないとなると、そう簡単には撤退できないでしょう。この場合は、この「自社商品」に、集中して、一点突破のカテゴリーキラーとして戦略を組み立てます。
2.自社独自の技術を活かせる市場で、カテゴリーキラー化
ある資材メーカーは、既に生産中止となっていた、古い特殊機械と製造技術を活かして、カテゴリーキラー化に成功しました。特定領域で、資材のオーダーメイド市場を切り開き、廃業まで考えていた工場を再建しました。
これまでに取引がなかった会社から、どんどん新しい仕事が入るようになり、わずか数カ月で、同社は経営危機から、一気に経営を立て直していきました。
「自社商品」に挑戦する前に、まだまだ、受託製造で売上を伸ばす余地があるケースも多くあります。この場合は、誇れる技術などをウリとして、受託事業そのものをカテゴリーキラーにしていきます。
3.下請け脱却のカテゴリーキラーを創出
ある食品メーカーは、受託製造事業がメインでしたが、価格競争で苦戦していました。そして、この状況を脱するために、自社のオリジナルブランドとしてのカテゴリーキラーを創出し大成功しました。
これまで営業にいってもうまく成約できなかった営業マンが、カテゴリーキラーを持つことで、どんどん販路開拓ができるようになりました。その営業マンは、「辛かった営業が、楽しいもの変わった」と言っていました。
その後、戦略づくりのコツをつかんで、連続的に売れる商品を生み出し、短期間で年商を2倍以上に拡大しました。
社歴が長いものづくり企業で、受託事業では利益が出ず、限界を感じている経営者も少なくありません。
そのような会社から、売れる「自社商品」づくりができる組織を目指して、指導を依頼されることも多くあります。
たまたまひとつの「自社商品」が売れても、その後、再度売れる「自社商品」づくりができなければ、いずれ、競合の参入が加速した段階、もしくはお客様のニーズが変化した段階で失速してしまいます。
大切なことは、カテゴリーキラーを繰り返し生み出せる組織づくりをしていくことです。
そのためには、経営者が、戦略づくりのコツと実践の感覚をつかんでいくことが何より大切です。
経営者が戦略づくりの自信を持てるようになると、それは、社員の自信にもつながり、組織全体に良い影響を及ぼします。
当社でお手伝いさせて頂いている会社で、長期的に成長している会社は、まずは、ひとつ、カテゴリーキラーを生み出すことに徹底的に集中しています。
そして成果を出すも、決してそこに安住せず、次の挑戦を連続的に仕掛けています。そうやって、人と事業が同時に成長しています。
もし、これをお読みのあなたの会社が、法人営業がうまくいかず悩まれていたり、業界の中で埋もれている傾向にあると感じるようであれば、まずは、自社のカテゴリーキラーづくりに目を向けてください。
そして、ぜひ、経営者自ら学びと実践に挑戦してください。
あなたの会社は、ウリのある「法人営業」ができていますか?
追伸:
新刊書籍の出版を記念しまして、経営者を対象として、「法人営業力」強化戦略セミナーを10/25に開催します。オンライン開催ですので、全国からお気軽にご参加いただけます。
このセミナーでは、「業界における自社のポジショニング」を明確にし、新規顧客の開拓につなげる法人営業のやり方について解説します。
新規開拓がうまくいかない方にとって、集客やセールスも含めて、どのようなスタンスで、改善していくべきかについても解説いたします。
また、後半では、自社が力を入れるべき点についてチェックシートを用いてお考えいただく時間を設けます。
今後、「法人営業」を強化したい経営者は、この機会をぜひご活用ください。
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株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝