第114話「カテゴリーキラーづくり」に挑戦するときに注意すべきポイント
「先生、これから新規事業として、カテゴリーキラーをつくりたいと思っているのですが、ご意見を頂けないでしょうか?」
先日、当社のセミナーを受講して「カテゴリーキラーづくり」に興味を持たれた、建設関連のお仕事をされている経営者から、このようなご相談を受けました。
同社は、建設関連の事業をメインとしつつ、地元で店舗サービス系の事業も行っています。
今回のご相談は、この2つの事業以外に3つめの事業を新規事業として立ち上げて、同社の「カテゴリーキラー」にしていきたいというお考えです。
メインとなっている建設関連の事業も、店舗サービス系の事業もどちらも、少し伸び悩んでおり、この先が不安ということでした。
そのような状況を脱して、ここから力強く事業を伸ばしていくための新規事業について真剣にお考えでした。
同社だけでなく、これまでにも多くの会社から同じような相談を受けて、実際に新規事業の立ち上げの支援も行っています。
新規事業をはじめるときに、慎重に考えなければならないことは、「資源配分」です。
つまり、どこに、どれだけの「資金・人・時間」をかけるかということですが、中小企業の場合は、何より「人」の問題について考えなければいけません。
この点をあまり考えずに新規事業に手を出すと、中途半端に終わってしまいます。
新規事業をやる人がいないという理由で、既存事業の担当者に兼務でやらせてみるということはよく見聞きすることですが、ほとんどうまくいきません。
新規事業は、その難易度にもよりますが、専任者1名が本気になって取り組んでも、しっかりと利益が出てくるまでに、3~5年かかります。
それを、既存事業と兼務でやろうとしても、なかなか手ごたえがつかめずに終わります。
当社のこれまでの経験では、中途半端に新規事業を立ち上げるよりも、できるだけ既存事業の領域で、じっくりと戦略を組み立てて、チャンスを見出した方が、スムーズに売上を拡大できることが多くあります。
ここでいう既存事業の領域とは、既存事業そのものを深掘りしていくだけでなく、既存のお客様に「新しい商品やサービス」を提供したり、既存の商品・サービスを「新しいお客様」に提供したりすることが考えられます。
もちろん、新規事業に取り組むことは、ひとつの選択肢として有効になることはありますが、どこに、どれだけの「資金・人・時間」をかけるかを意識しながら、既存事業の領域もふまえて、全体感から最適な選択をしていくことが大切です。
新規事業を考えている経営者に、一度立ち止まって考えて頂きたいのは、本当に既存事業は、将来性がないか、ということです。
というのは、これまでの経験で、既存事業が苦しいという会社が、では、どれだけ既存事業の市場を分析しているかと言えば、イメージで捉えているだけで、具体的な調査をしたり、自社の強みが活きる特定領域を見出したりすることができていないケースがほとんどだからです。
また、自社の魅力をうまく伝えられていないことで機会損失を招いている会社も多くあります。
たとえば、年商5億円の企業が所属している業界の全体の売上規模は、500億円規模の市場だったりすることがよくあります。
ということは、仮にこの業界が斜陽産業であっても、自社にとっては、まだまだ、売上の伸び代は十分にあります。
ですからまずは、この500億円の市場に着目して、いまの既存事業を少しアレンジして、自社の強みが効く特定領域はないか、その特定領域において「カテゴリーキラー」として立たせていくことを考えます。
そうすることで、新規事業と比較して、「資金・人・時間」をかけずに、売上を拡大していくことができます。
しかも、その既存事業において、しっかりと強みが効いて、「カテゴリーキラー」といえる事業を創出することができれば、価格競争に陥らずに、お客様の方から声をかけてもらえるようになります。
このことは、これまで、多くのプロジェクトで経験してきました。
BtoB向けに、住宅関連のサービスを手掛けていたA社は、当社の「カテゴリーキラーづくりコンサルティング」を受けるにあたって、これまでに取り扱い経験がない新しい商材をもって、BtoCの新市場を開拓しようと考えていました。
しかし、一旦立ち止まって、本当にこれまで経験がない商材をテーマとして取り組むべきかどうかについて、真剣に考えてもらいました。
その結果、現在メインで扱っている、既存のサービスを活かして、BtoC市場を開拓していくことになりました。
その後、A社は同サービスを、「カテゴリーキラー」として打ち出して、1年も立たないうちに大きな売上を上げることに成功しています。
また、BtoB向けに専門サービスを提供していたB社は、お客様に大変喜ばれており、新規の顧客開拓は、紹介に頼っていました。
しかし、近年は紹介が減り少し不安をかかえていました。
紹介に頼ることは、プロモーションコストもかからず、大変良いことではありますが、BtoBのビジネスで、新規開拓の流入経路が、紹介1つということは、経営上大きな不安材料となります。
紹介がゼロになれば、成長は止まってしまいます。
このようなケースでは、新規開拓をするために様々なプロモーション施策をテストして、自社に最適な、新たな顧客獲得パターンを見出していく必要があります。
ここで、よく失敗してしまうことは、「カテゴリーキラー」を持たずに、プロモーションをやり続けてしまうことです。
「カテゴリーキラー」を持たないで、プロモーションをいくら仕掛けてみても、同じようにプロモーションをやっている競合他社の中で埋もれてしまいます。
結果として、思うような成果がなかなか上がりません。
プロモーションを手掛ける前に、既存の商品・サービス(または事業そのもの)を「カテゴリーキラー」として立たせていくことが重要です。
B社は、当社の考え方を理解して頂き、専門サービスとしてどのように「カテゴリーキラー」を立たせていくかについて、真剣に戦略を検討し、そして素早く実行しました。
すると翌年から、紹介以外にも、ホームページやWEBプロモーションを通じて、どんどん新規のお客様から問い合わせが入ようになり、その流れが加速していきました。
結果として、新規の顧客開拓件数は、過去最大となりました。
さらに注目すべき点は、B社は、しっかりと、最もお役に立てるターゲットを定めて、「カテゴリーキラー」を打ち出していたことにより、B社のサービスをしっかりと理解したお客様が成約するようになりました。
このことは、実際の現場を担当している社員の負担を大幅に軽減します。
社員を一番に大切にしているB社にとって、非常に喜ばしい結果になりました。
当社が「カテゴリーキラーづくり」を支援する際に、最初に気をつけることは、何を「カテゴリーキラー」にするかということです。
ご依頼いただく会社によっては、はじめから何を「カテゴリーキラー」にするか、テーマを決めてスタートするプロジェクトもありますが、テーマを決めずに、スタートするプロジェクトもあります。
テーマを決めていないプロジェクトでは、既存事業の強みをしっかりと確認したうえで、その強みがしっかり活かされる「カテゴリーキラー」を検討していきます。
このときに、前述の通り、新規事業に取り組むことは、ひとつの選択肢として有効になることはありますが、どこに、どれだけの「資金・人・時間」をかけるかを意識しながら、既存事業の領域もふまえて、全体感から最適な選択をしていくことが大切です。
新規事業は、時間をかけて、粘り強く市場を開拓していく覚悟が必要です。
いくら社長がやりたいと考えていても、既存事業で手一杯で、本気でやりきる専任者がいなかったり、3~5年という長期間投資し続ける余力がなかったりすると途中で止まってしまいます。
「カテゴリーキラー」を作る際は、ぜひ、この点を念頭に置いて頂き、挑戦して頂きたいと思います。
何を「カテゴリーキラー」にするべきか、一度真剣に考えてみませんか?
追伸:
「カテゴリーキラーづくり」について、テーマや進め方でお悩みの方は、当社のスポットコンサルティングをご利用ください。貴社の現状をお話いただき、今後取り組むべき方向性などについて、ご相談頂けます。
スポットコンサルティングは、当社オフィスにご来社頂くほか、オンラインでもご利用頂けます。
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝