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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第116話 新規事業がうまくいかないときに、社長が考えるべきポイント

 「既存の事業は、それなりに順調ですが、なかなか新規事業がうまく立ちあがりません。どうしたらよいでしょうか?」

当社の「スポットコンサルティング」をご利用された、ある店舗サービスを展開している会社の経営者からの相談でした。


 

当社には、新規事業がうまくいかず、ご相談に来られる方は少なくありません。

ひとくちに新規事業といっても、その内容や難易度は様々ですが、これまでの事業形態を応用した新規事業もありますし、全く経験がない分野に挑戦する新規事業のご相談もあります。

 

同社は、既存で展開している店舗サービスがあり、これまで、それなりに順調に事業を拡大してきました。それは、1店舗目で成功したモデルを、複数店舗に拡大していくやり方でした。

 

今回ご相談の新規事業は、この店舗サービスの経験をいかして、挑戦したものでしたが、これまでの店舗サービスとの大きな違いは、まだ世の中に認知されていないような新サービスを売りとした内容でした。

 

同社は、新規事業を立ち上げるも、なかなか売上につながらないことから、いろいろと売り方を変えて、思考錯誤してきました。同社にとってこの新規事業は、設備投資の額も大きく、失敗できない挑戦です。

 

同社は、相談にこられた時点で、いくつかの打開策を持っていましたが、いずれも売り方に関するアイデアでした。

 

新規事業がうまくいかないときに、必ずといっていいほど経営者が陥ってしまうことは、このように売り方の「戦術」に目をむけてしまい、それより一歩引いた、「戦略」に目がいかなくなってしまうということです。

 

大きな「戦略」のズレがあるとすれば、「戦術」の改善では、根本的な解決に至りません。こういうと簡単に聞こえますが、当事者の経営者は、当社のように「戦略」づくりの専門家ではありませんから、「戦略」のズレと、「戦術」の違い、意味合いが感覚的に理解できません。

 

そして、創業者の場合は、皆さんチャレンジ精神が旺盛ですから、自分が立てた仮説をどんどん実行したくなります。これでもか、これでもかと、「売り方」の領域で、挑戦を続けてしまいます。

 

しかし、「戦術」の改善では、「戦略」のズレを修整することはできません。ですから、新規事業がうまくいかないときに一番大切なことは、経営者が冷静に、「戦略」がズレていないか、について一旦立ち止まって考えるべきということです。

 

 

もしも、「戦略」のズレに気づかずに、「戦術」としての売り方の改善ばかりを続けていくと、3つの弊害につながります。

 

それは、

1.時間の浪費

2.資金の浪費

3.社員の疲弊

です。

 

新規事業の場合、時間の浪費と、資金の浪費は、経営者もある程度は覚悟しています。しかし、一番怖いのは、社員の疲弊です。

 

 最悪の場合は、現場のリーダーが退職してしまいます。

責任感がある人ほど、ストレスをため込みながら一所懸命にがんばるのですが、突然やめてしまうということが起こります。

 お金にならない部門で、まわりの社員の目を気にしながら、一生懸命に頑張っているということも大きな要因です。

そして、新規事業がうまくいかないと、行き場を失ってしまうのです。もちろん、経営者はそんなに悪く思っていないと思うのですが、任された本人にとってみれば、そう簡単に捉えることはできないのでしょう。

 

 経営者が、新規事業を任せるほどの人物がやめてしまう事態は、会社にとって大きな痛手となります。

 

 さらに苦しいのは、もしも新規事業を中断することになれば、社内のムードも厳しくなります。それは、次の新規事業をやろうというムードがつくりにくくなることです。

経営者は、どんどん次の挑戦をしたくても、なかなか賛同が得られにくくなってしまいます。

 

 過去に、そのような状況に陥ってしまった会社からの相談もありましたが、社長は、新規事業に対して情熱を持っているのですが、社員の方は、「またはじまったぞ。気を付けろ、あまり関わるな。」というムードになってしまっていました。

こうなると、プロジェクト自体がなかなか立ちあがりませんし、みんな逃げ腰で、どうしようもなくなります。

 

 やはり、「戦略」のズレは、「戦術」でカバーできませんから、一旦立ち止まって、冷静に検討することが大切です。

 

これまでの当社の経験で、新規事業がうまくいかないときに、売り方の「戦術」ではなく、「戦略」のズレを見直してうまく行った事例をひとつご紹介したいと思います。

 

その会社は、新規事業として、ある業務用の特殊機器を開発しました。クラウドサービスと連動させて、いろんな業界のお役立ちができる特殊機器でした。

 

立ち上げて、数年経過するも、売上げが思うように上がらなかったところ、お付き合いがあった弁理士の方から、当社を紹介されて相談に来られました。

 

このときも前述の会社と同様に「売り方」のプランをたくさん考えられており、それについて、どうかと意見を求められました。

 

しかし、私どもは経験上、「売り方」では突破できない「戦略」のズレを感じていました。それをお伝えしたところ、ご理解いただきコンサルティングがスタートしました。

 

コンサルティングがスタートするも、まだ「売り方」の改善に対する執着があったので、少しやりにくかったのを記憶していますが、その都度、「戦略」づくりのポイントをお伝えし、ひとつひとつ丁寧に組み立てていきました。

 

新規事業の「戦略」づくりのポイントは、複数ありますが、大きなポイントを一言でいえば、市場性の検証です。

思いついたことをどんどん進めたい経営者からすると少し面倒ですが、机上であらゆる仮説を並べ、市場性を検証することです。そして、自社にとって最適なカードを引くイメージです。

 

この特殊機器を扱っている会社は、当社と共に、しっかりと机上で仮説を検証して戦略プランをつくりました。そして、見事に大きな市場開拓に成功しました。

 

最初に出稿した新聞広告で、すぐに大きな反響があったので、とても喜ばれていました。その後も、展示会などを活用して、どんどん新規顧客の開拓に成功し、大きな売上を生み出しました。経営者は、これまでと同じ「売り方」でもこんなに成果が違うものかと、驚かれていました。

 

同社の成果は、しっかりと机上で仮説を検証して戦略プランをつくったことの成果ですが、このことが面倒な経営者は、思いついたことをどんどん進めてしまいます。

問題は、「戦略」も「戦術」もごちゃまぜに考えて、とにかくどんどん進めてしまうことです。

 

このやり方の欠点は、机上でよく検証してから取りかかることにくらべて、時間とお金の浪費につながるだけでなく、たまたまうまくいけば儲けものですが、結果が悪い場合にしっかりと検証できないことです。

 

もし、既存事業からの脱却が目的であれば、たまたまうまくいく事業を開発するよりも、しっかりと検証して結果が出せる組織になる方が何倍も価値があります。

それは、組織のノウハウとなって、後につながるからです。当社は、過去15年間の活動の中で、そうやって成長していく会社をたくさん見てきました。

 

最近の事例では、当社がお手伝いしてヒット商品を生み出した雑貨メーカーが、その後も連続的にヒット商品を生み出し続け、大きく成長しています。

同社の取り組みは、テレビ番組の「ガイアの夜明け」など、著名なメディアで多数取り上げられ、業界で注目されています。

このような成功の裏には、経営者が苦しい状況から、意識を変えて、自社に足りない「戦略」づくりにしっかりと向き合ってきた努力があります。

 

 特殊機器メーカーの例も、雑貨メーカーの例も、市場をしっかりと見て検証していく点においては、同じです。業種・業界、そしてBtoC、BtoB向けのビジネスもあまり問題ではありません。基本的な市場の見立てや、検証方法は変わらないのです。

要は、自己が所属する業界をしっかりと見て、「戦略」を検討できる力を持つことが大切なのです。

そのことに経営者が気づいて、本気でものにしようとするかどうかが、今後の企業成長に大きく関係します。

 

もし、あなたの会社が新規事業がうまくいかず悩んでいるようでれば、「戦略」のズレは、「戦術」でカバーできないということを肝に銘じて、一旦立ち止まって考えてみることをお勧めします。

 

新規事業の「戦略」が、ズレたままになっていませんか?

 

追伸:

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株式会社ミスターマーケティング

代表コンサルタント

村松 勝