第79話 業態(ビジネスモデル)を変える決断をするとき
「これからの現事業の先行きを考えて、当社として新しくチャレンジする新規事業の立ち上げを考えているんです。」
先日、当社のスポットコンサルティングで、ある経営者から、ご相談がありました。
コロナ禍に直面して、否応なしに、自社のこれまでの事業の見直しに取り組まなければならなくなった企業も多いと思います。
企業は、「変化対応業」とはよく言ったもので、外部環境の変化に合わせて生きていく側面があることは否めません。
外部環境の変化によって起こった物事(事実)に対しては、基本的に等しく、どの企業にも訪れますが、企業ごとで見ると、業態や業種、対象顧客、市場、業界、取り扱い商品やサービス、そしてビジネスモデルによって、機会にもなり、脅威にもなります。
そして、もし外部環境の変化を脅威と感じ、業績も厳しくなっているのであれば、今の業態やビジネスモデルで、これからも経営していけるのか、それとも新しい取り組みにチャレンジしていくのか、ここで一度、改めて考えてみる必要があります。
とはいっても、外部環境の変化に対して、具体的にどうやって自社の業態や事業、そしてビジネスモデルを変化させていくのか、どこにメスを入れていくのか、ということについて、絶対的な解がないだけに、必要性がわかっていても、次のアクションが取れない方もいるのだと思います。
ところで、「ビジネスモデル」という言葉をよく聞きますが、調べてみると、
「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し顧客に届けるかを論理的に記述したもの」
と定義されています。
「ビジネスモデル」という言葉自体が広まったのは、2000年代に、GoogleやYahoo!に代表されるようなネット広告ビジネスや、Amazonなどのネット通販やEC(電子商取引)など、インターネットを使ったビジネスが広まってから、よく使われるようになりました。
しかし定義から考えると、必ずしもインターネットを前提としたビジネスのことだけではなく、例えば、
・卸売りや小売り業からメーカー業への進出
・BtoB(企業間取引)からBtoC(対消費者への販売)への進出
・メーカーが消費者に直接商品を販売するD2C(Direct to Consumer)(これはインターネットを使った販売ですが)
などが挙げられます。
当社のクライアント企業でも、卸売りや小売業からメーカー業へ進出した例は、食品メーカーがあります。
この会社は、かつては卸売業を生業としてきましたが、経営者が、「いずれは卸売業は生き残れない」と判断し、自社工場を設立して製造することを始めました。その後、卸売業の同業がほとんどつぶれていきました。
そして工場の製造に進出したことによって、顧客のニーズに応えられる、ハイレベルなものづくりができ、売上も上がっていきました。
しかし、工場の製造による付加価値にも限界が見え始めたことから、ここ数年は、さらに農業にも進出し、他社がほとんど手がけていない農産物の生産を開始しました。
もちろん、その農産物をただ流通先に卸すだけではなく、自社工場で商品化し、会社もまたブランディングすることによって、業界で、唯一独自のポジションを築き、その商品は、大手流通業に続々採用されています。
その食品メーカーは、このコロナ禍においても、さらに農業への投資を拡大して、目先の売上ではなく、数年から10年後の世界を見据えて、長期的な視野で取り組んでいます。
日本の農業人口が減ることを考えれば、いずれは勝ち残る算段をすでにしています。
このようなビジネスモデルの転換を、「垂直統合」と称します。
業界は違いますが、例えば、アパレル業界の雄であるユニクロも、かつては小売業だった会社を、ものづくりに進出し、日本でSPA(specialty store retailer of Private label Apparel:製造小売業)と呼ばれる業態を確立しました。
そして、このコロナ禍で、大手のアパレル企業が、倒産またはブランドの縮小、リストラをしている最中でも、簡単には揺るがないビジネスモデルを築き上げてきました。
もちろん、食品メーカーにせよ、ユニクロにせよ、これまで卸売業や小売業をやってきた会社からすれば、当初、ものづくりのノウハウや、また自社商品をいかにバイヤーや消費者に買いたいと思わせるようなブランド化へのノウハウは、ありませんでした。
それでも、果敢にチャレンジして、ノウハウを取り入れ、失敗を繰り返しながらも、今の礎を築いてきました。
これらの企業に共通することは、コロナだからビジネスモデルの変更を余儀なくされた、というよりも、コロナ以前から時間をかけて、今のビジネスモデルを築いてきた点です。
そして、さらに、このコロナをきっかけに、次の新しいビジネスモデルを創り上げようと、すでに準備が始まっています。
冒頭の企業のように、新しくチャレンジする新規事業の立ち上げは、会社によっては時間がかかる場合もありますし、ビジネスモデルの転換といっても何かインターネットを使えば、すぐにでもカタチになる、というものでもありません。
戦略を練り上げた上で、それを仮説として、素早く実行し、一度やり切った上で、また検証して、次のアクションにつなげていく、といった粘り強さも必要とされます。
もちろん新しく事業を始めるときや、新商品開発をするときもリスクはありますので、その会社ごとのリスクの許容範囲内で、スモールスタートやテストマーケティングでも良いと思います。
そして何よりもまずは、できれば1つの事業や商品、サービスを素早く立ち上げ、早期に小さくても良いので、うまくカタチにしていき、大きな売上にならずとも、スモールウィン(小さな勝利)を勝ち取る、といったことがとても大切です。
その理由は、失敗が続けば、やはり経営者のみならず、社員やスタッフが自信をなくしてしまい、モチベーションも下がり、負け癖も付き、ただいたずらに時間とお金を浪費してしまい、いずれは変わろうという意欲も失せてしまうからです。
経営者は、いかにして社員やスタッフに成功体験を積ませ、自信を付けさせていけるかも大事な仕事です。
そして、1つうまくいくと、雪だるまが転がってどんどん大きくなっていくように、事業や売上の拡大にもつながっていきます。
過去、300社以上の指導の中で、そのように成果を生み出せるようになった人をたくさん見てきました。
そのためにも、うまくノウハウを取り入れ、素早くカタチにしていくだけではなく、成功確率を上げながら、プロジェクトを運営していく姿勢も大切になります。
ビジネスモデルの転換とか、ビジネスモデルの創造、なんて言うと、たいそう大げさな話にも聞こえるかもしれません。
しかし、まずは自社の強みを活かして、これまでやってこなかった新しいことに取り組んでみること、というのは、現在のコロナという、やや閉塞感を感じる状況下においても、会社の重要な取り組みにもつながりますし、社員の士気にも影響します。
あなたの会社も、今のビジネスモデルでこれからも経営していけるのか、それとも新しい取り組みにチャレンジしていくのか、一度このタイミングで考えてみませんか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
追伸
前回のメールマガジンでお伝えした顧客インタビューレポート、
【最新!成功事例】新商品が大ヒット!コロナに負けない「カテゴリーキラー」、当社ウェブサイトで公開中です。
老舗家電メーカーの3代目経営者が手がけた、斜陽産業におけるカテゴリーキラー商品の開発によって、このコロナ禍でも、年間販売目標の3倍を上回るペースで受注が伸び、そのカテゴリーキラーをきっかけに、全ての商品の在庫が完売し、注文は3カ月待ちの状態が続いた事例について、インタビュー形式で公開しております。
もしまだご覧頂いていない方は、ぜひ以下のサイトをクリックしてご覧下さい。
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