第9話 多くの社長が願う「新しい売上げの柱」づくりがいつも失敗する3つの理由
※カテゴリーキラーとは、顧客のココロに突き刺さる、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
このように考えている経営者は、多いものです。そして、勇気を出して新商品開発、新サービス開発などに投資するものの、なかなかうまくいかないケースは多いです。
少しでも、売上げが上がっていく兆しが見えればよいですが、そのような傾向もないと、そう長くモチベーションも続かなくなってきます。
そして、ご相談に来られる経営者からは、「在庫の山になっている商品をなんとか売れる商品に変えたい」、「価格競争に巻き込まれた商品をなんとか売れる商品に変えたい」といった難しいご相談をいくつも受けてきました。
そのような難しいご相談は、なんとしてもやりきるという経営者の「想い」が強ければ、かなりの確率で成果が出ます。
そして、そのようなご相談が来た際に、当社は、以下の3つの視点でアドバイスを行っています。この3つの視点が欠けていると、「新しい売上げの柱」づくりは、いつまでたってもうまくいきません。
1つめは、「売り方」の問題です。
新商品や新サービスなど、次の「新しい売上げの柱」づくりでうまく行かないというご相談をうける際は、まず、大きく「売るモノ」の問題か、「売り方」の問題かという2つの視点を持って指導しています。
「売るモノ」のコンセプトそのものが良いのに売れない、という場合は販売チャネルやプロモーション方法を検証したり、営業を強化していくことでチャンスが見いだせる可能性があります。
せっかく「売るモノ」のコンセプトが良くても、販売チャネルの選定やプロモーション、営業活動などを途中であきらめてしまうもったいないケースもあります。
これは、なんとしても売ろうという想いが弱いケースです。想いが弱ければ、私どもはどうすることもできません。
このようなケースは、後述するビジョン設定と新商品、新サービスがつながっていない可能性もあります。事業ビジョンに向かってなんとしてもやりきろう、そのためにこの新商品・新サービスをなんとしても売っていこう、という意思決定が弱い場合は、このような結果を招いてしまうことがあります。
2つめは、「売るモノ」の問題です。
また、一方で、「売るモノ」自体のコンセプトが市場に受け入れられていない場合は、「売り方」ではなく、もう一度仕切り直して、商品・サービスそのものを見直す必要があります。
そして、「売り方」ではなくて「売るモノ」のコンセプトを見直すことは、どうしてもそれなりの時間と労力がかかります。
冒頭で紹介したご相談例のように、新商品や新サービスを生み出して、その後、当社にご相談に来られるケースのほとんどは、「売り方」については色々と努力をされた後です。そのため「売るモノ」のコンセプトそのものから見直した方がよい場合が多くあります。
「売り方」で苦労を重ねて、結果として数千万円、時には億単位の投資が回収できないと悩まれる前に、やってほしいことは、新商品や新サービスの企画を練る段階で、「売るモノ」のコンセプトをつくるところにしっかりと時間と労力をかけてほしいということです。
多くの場合は、「売るモノ」のコンセプト検証をおろそかにして、一日も早く新商品・新サービスを売り出すことに意識を向けてしまいます。そして、そのあと何年も苦労が続いてしまいます。時間をかけて検証すべきところをおろそかにしているとそうなります。
もちろん、「売るモノ」のコンセプトが良くても売れ出すまでに時間がかかるケースもありますが、市場で必要とされている商品・サービスはじわじわと伸びていきます。
特に、ニーズが顕在化していないような、これまでにない新しいコンセプト商品やサービスは、時間がかかります。しかし、必ず売れると信じて努力を積み上げていけば、その積み重ねの努力は競争優位となり、市場を独占できる可能性が高まります。
3つめは、「事業戦略シナリオ」の問題です。
さらにもうひとつ、新商品や新サービスを生み出す過程で、意外と見落とされていることは、事業としての戦略シナリオがすっぽり抜けているというケースです。実は、前述の「売り方」や「売るモノ」よりも、こちらの方が10倍ぐらい大切です。
そもそも、会社の商品やサービスは、社会へのお役立ちとして、自社のミッションを具現化する手段です。そして、新商品や新サービスといったあたらしい取り組みは、長期的な事業ビジョンを具現化する手段です。
その手段の選択肢があまりにも狭かったり、時にはまったく的外れなケースが散見されます。新商品、新サービスを生み出して、その後売れないと悩まれている経営者に、事業という視点でビジョンを伺うと、どうもそのビジョンと新商品・新サービスを生み出す視点が一致していないということがあります。
極端な例で説明すると、「日本一の工具メーカーになる」というビジョンを掲げているのに、海外でたまたま知った新しい業態の、本業とは関係のないビジネスを始めるというケースです。これでは、まったくビジョンに近づけません。逆に意味のない遠回りです。
これは極端な例ですが、大なり小なり、戦略カードの全体像を考えるというプロセスが抜けているケースは多いものです。やりたいこと、できること、そして時間軸を整理して、戦略カードの全体感から新しいことに挑戦する必要があります。
そして、社長が描いた事業戦略シナリオは、明文化して、社員と共有していくことで組織力もぐんと高まります。そのように生まれ変わった会社をたくさん見てきました。
どの業界も既存の事業に頼っていると、それまでじっくり準備を重ねてきた競合企業にばっさりと市場を奪われてしまうことがあります。もし、現在安定的に利益が出ているのであれば、必ず競合企業が現れます。時には、自社の商品・サービスを無力化する強いコンセプトをぶつけてくるケースもあります。そうなってからでは、遅すぎます。
ですから、経営者は常に次の一手を真剣に考えているわけですが、ぜひ新しい取り組みは、慎重に行ってほしいと思います。
ビジョン設定からはじまり、事業選定、新商品、新サービス、そして売り方まで一貫して戦略を、選択肢の全体感から作りこんでいく構想力が問われます。
この連動がうまくかみあってくると、連続的に売れる商品・サービスを提供していくことができます。結果としてその事業は、業界を圧倒するカテゴーブランドになります。
代表コンサルタント
村松 勝
- 【追伸1】
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当社セミナーでは、新しいフレームワークとして、カテゴリーキラーの基本概念や、「中小企業の事業発展構造」について知っていただくことで、経営者の戦略思考を高めることができます。ご興味がある経営者は、お席があと少し残っていますのでこの機会にぜひご参加ください。
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