中小企業の競争力を高める!マーケティング戦略完全ガイド【特別コラム】 戦略フレームワークの理解と成功事例から学ぶ
中小企業が競争の中で勝ち抜き、着実に成長するためには、競合他社との差別化が欠かせません。
このコラムでは、「マーケティングとは何か?」という基本的な視点から、成功事例や実践的なフレームワークまでを分かりやすく解説しています。
きっと、自社の商品やサービスの強みを活かすヒントが見つかるはずです。
ぜひ、この記事を通じて、新たな挑戦のきっかけをつかんでください!
目次:
1.はじめに: マーケティングを正しく理解しよう
2.なぜ中小企業がマーケティングに取り組むべきなのか?
3.中小企業が直面するマーケティング活動の主な課題
4.マーケティング戦略「基本フレームワーク」の理解
5.スターバックスに見る、フレームワーク活用事例
6.中小企業のマーケティング戦略成功事例
7.中小企業のマーケティングで注意すべき5つのポイント
8.まとめ
1.はじめに: マーケティングを正しく理解しよう
マーケティングと聞くと、「広告」や「プロモーション」を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、それはマーケティングの一部にすぎません。
また、「マーケティング調査」を指すと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、調査はあくまで全体のプロセスを支える一要素に過ぎないのです。
マーケティングとは本来、もっと大きな視点で考えるべきものです。
まずはその定義を見直し、中小企業にとっての重要性を一緒に考えていきましょう。
<最新のマーケティングの定義>
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アメリカマーケティング協会(AMA)の定義
「マーケティングとは、顧客、クライアント、パートナー、そして社会全体に価値のあるオファリング(提供物)を創造し、伝達し、提供し、交換するための活動、組織、プロセスの集合である。」
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日本マーケティング協会の定義
「マーケティングとは、顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」
少し学術的で、かたいですが、これらの定義が示すのは、マーケティングが単なる「売上促進」や「顧客満足」にとどまらず、顧客や社会、ステークホルダーと長期的な関係を構築し、価値を共創する活動であるということです。
これを理解することで、マーケティングの本質が見えてきます。
<マーケティングの本質>
マーケティングの本質は、「価値創造」を中心に据えた包括的な活動です。競合他社との差別化を図り、顧客に「選ばれる理由」を明確にすることが重要です。
単に商品やサービスをつくって売る、といった活動を行っても、お客様には売れないことは容易に想像が付くでしょう。
マーケティングは大企業だけの話ではありません。むしろ、中小企業だからこそ、その特性(たとえば限られたリソースや地域に密着した活動)を活かして、大きな効果を生み出せるチャンスがあるのです。
<中小企業におけるマーケティングの核心>
中小企業は、マーケティングの本質である「価値創造」を前提とした、商品・サービス、事業の創出を第一に考えていくことがとても重要です。
顧客の心に響く価値や、特定の課題を解決するユニークな提案を盛り込んだ商品・サービス・事業は、他にはない魅力を放ちます。このような独自性の高い商品・サービス・事業を展開することで、中小企業でも価格競争に巻き込まれることなく、独自のポジションを確立できます。
マーケティングと言えば、多くの企業が広告宣伝やプロモーション活動などの売り方に力を注ぐ一方で、その前にまず売れるモノを生み出すことが、その後のマーケティング活動の効果を飛躍的に高めます。
当社では、競合他社を圧倒する差別化された強い商品やサービス・事業を「カテゴリーキラー」と呼び、中小企業の競争力を高める方法としてご紹介しています。
2.なぜ中小企業がマーケティングに取り組むべきなのか?
中小企業にとって、マーケティングは大企業と同じ市場で戦うための「武器」となるだけでなく、「売るモノ」から「売り方」までをトータルで考える活動です。
それは、長期期的な成長の基盤を築く上で欠かせない重要な取り組みです。
<中小企業がマーケティングに取り組むメリット>
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価格競争からの脱却
中小企業が陥りがちな課題の一つが、価格競争に巻き込まれることです。
特に、大手企業との競争において「安さ」を武器にする戦略は、利益を圧迫し、事業の継続を難しくすることがあります。
他社にない価値を提供することで、価格以外の競争軸を作り出すことが重要です。
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新規顧客の獲得とリピーターの育成
企業の成長には、新規顧客の獲得と既存顧客のリピート利用が欠かせません。顧客向けのメッセージを追求していくことで、新規顧客の獲得効率を上げ、さらにリピーターの育成にもつなげていくことが可能になります。
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持続的な成長の実現
短期的な売上だけでなく、顧客との信頼関係を構築することで、長期的な収益を生む仕組みを作ることができます。
マーケティングを通じて、持続可能な成長を実現できます。
<中小企業によるマーケティングの効果的な活かし方>
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自社の強みを最大限に活かす戦略をつくること
マーケティングを通じて、自社の強みを明確にし、それを戦略に組み込むことは、中小企業が競争優位性を確立するうえで重要です。
たとえば、専門性の高い製品やサービスを提供している場合、その技術力や専門知識を軸に展開することで競争優位性を確立できます。
また、地域密着型のビジネスでは、大手にはない柔軟性や親近感を活かし、独自の強みを打ち出すことが考えられます。
これらのことは、多くの経営者が認識していますが、実際に実行できている企業は少数です。まずは、マーケティング思考を高めて考える力をつけることが大切です。
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限られた予算で効率的な施策を考えること
中小企業の多くは、限られたリソース(資源)を分散させがちです。
しかし、顧客層を的確に把握し、優先順位を明確にして、リソースを集中させるだけでも大きな効果が期待できます。
「誰に何をどのように伝えるのか」を明確にすることで、無駄な出費を抑えながら目標を効率的に達成できます。
さらに、顧客のフィードバックや社内で蓄積された知見を活用し、施策を改善するサイクルを導入することで、顧客満足度の向上やリピーターの増加にもつながります。
限られた予算でも、適切な戦略と改善を積み重ねることで、大きな成果を実現できるのです。
マーケティングに不慣れな方は、ここにあげたメリットや活かし方を読んでも、なかなかイメージできないと思います。
そこで、本コラムでは。実際に中小企業でマーケティングに取り組み、厳しい経営状態を脱した事例を後半で紹介しています。
3.中小企業が直面するマーケティング活動の主な課題
中小企業におけるマーケティング活動は、大企業と比べてリソースが限られていることが多く、特有の課題に直面しがちです。ここでは、よく見られる課題とその解決に向けた基本的なポイントについて説明します。
<課題1:リソース不足(人材・予算の制約)>
中小企業では、マーケティング専任の人材を確保できなかったり、十分な予算を割り当てられなかったりすることが一般的です。
この結果、マーケティング活動が断片的になりがちで、競争力のある施策を打ち出すことが難しくなります。
- 解決策:内部リソースを活用した効率的な施策展開
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顧客の声を活用した簡易調査の実施:
- 既存顧客のアンケートや日々の営業活動を通じてニーズを把握し、簡易的な市場調査を行います。これにより、費用を抑えながら顧客の本音を戦略に反映させることが可能です。
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カテゴリーキラーに特化した戦略:
- 自社の強みを活かし、競合他社と差別化された商品・サービス、事業(=カテゴリーキラー)に集中することで、分散的なマーケティングではなく、効果を最大化する施策を実現します。
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低コストツールの活用:
- プロモーション活動においては、SNSや無料で使えるメールマーケティングツールなどを活用し、効率的に顧客と接点を持つ施策を展開します。
- できるだけ費用がかからないプロモーションで成果を積みあげていくスタンスが大切です。
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<課題2:専門知識の不足>
中小企業の経営者や従業員は、マーケティングの専門知識を持たない場合が多く、何から始めればよいのかわからない、あるいは適切な優先順位がつけられないという課題に直面します。
- 解決策:フレームワークの活用と専門家の支援
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フレームワークの導入:
- 後述する3C分析、STP戦略、4P戦略などの基礎的なフレームワークを導入することで、無駄を省きつつ明確なマーケティング戦略を設計できます。
- もちろん、不慣れな方にとっては難しい印象があると思いますが、まずは、経営者が主導となって、これらの基礎的なフレームワークを理解して、経営に活かしていく姿勢が大切です。中小企業は、経営者がマーケティングに強くなれば、必ず業績は上がります。
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外部リソースの活用:
- 経験豊富なマーケティング担当者を雇用することは、採用や人件費においてハードルが高くなります。
- まずは、既存の体制で、外部の専門家の支援や学びを活かして、実践しながら育成していくことが現実的です。
- 長期的な視点でマーケティングに強い人材を育成していくことが、将来の大きな競争力につながります。
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<課題3:戦略のないプロモーションの実施>
短期的な売上目標に追われるあまり、綿密な計画を立てずにプロモーションを開始してしまうことがあります。これにより、無駄な広告費が発生し、期待した効果が得られない状況を招きます。
- 解決策:段階的な施策展開と戦略の検証
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カテゴリーキラーを軸に据えたプロモーション:
- プロモーション施策に意識を向ける前に、第一に、自社商品やサービスの差別化ポイントを明確にし、カテゴリーキラーを生み出すことが大切です。
- そのうえで、第二段階として、その魅力を顧客に一貫して伝える魅力的なメッセージやビジュアル、ツール等を開発することが重要です。この2つのステップをしっかりとクリアすることが、プロモーションを成功に導く重大ポイントになります。
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小規模施策からのスタート:
- 初めから大規模なキャンペーンを行うのではなく、テスト的な意識をもって施策を試行します。効果を測定しながら、徐々に施策を拡大していきます。
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KPI(重要業績評価指標)の設定と改善:
- 施策の効果を測定するために、「問い合わせ件数」や「問い合わせ率」、「購入数」や「購入率」などの具体的な指標を設定し、結果を分析して次の施策に活かします。
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中小企業が直面するリソースや知識の不足、戦略不在のプロモーションといった課題は、一つずつ解決していくことが可能です。
マーケティングは、一度に全てを解決する必要はありません。
小さな成功を積み重ねることで、着実に競争力を高める道を歩むことができます。
4.マーケティング戦略「基本フレームワーク」の理解
中小企業が効果的なマーケティング戦略を展開するためには、基本となるフレームワークを理解し、それを実際の活動に活かすことが重要です。
ここでは、マーケティング戦略の基盤となる3C分析、STP戦略、4P戦略について解説します。
それぞれのフレームワークは、競合他社と差別化された、強い商品・サービス、事業(=カテゴリーキラー)を生み出すために、不可欠な視点になります。
<3C分析>
3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場を分析し、戦略を立案するためのフレームワークです。この分析により、自社が置かれた市場環境を包括的に理解することができます。
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顧客(Customer)
顧客のニーズや購買行動、市場動向を把握することが、効果的なマーケティング戦略の出発点となります。たとえば、顧客が求めている価値や、どのような要因で商品を選んでいるのかを明確にすることで、適切な商品やサービス、事業を提供する基盤が整います。
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競合(Competitor)
競合他社の強みや弱みを分析し、自社との違いを明確にします。競合他社の製品やサービスが市場でどのように受け入れられているのかを把握することで、自社が差別化を図るためのポイントを見つけることができます。顧客に受け入れられるだけではなく、同時に競合他社と明確に棲み分けをすることが、ポイントになります。
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自社(Company)
自社の強みやリソース、課題を見極め、競争力を高める方法を考えます。
強みが効いていない商品・サービス、事業では、競合他社をしのぐ差別化を生むことは難しいでしょう。強みが効いていなければ、一時的にお客様に喜ばれる商品を生み出すことができたとしても、すぐに競合他社に追随され、市場を奪われていまいます。
3C分析は有名な手法ですが、単に「顧客」「自社」「競合」に関する事実を書き出すだけでは、有効な戦略につながりません。特に一般的な研修などでは、情報を書き出しただけで満足してしまうケースが多く見受けられるので注意が必要です。
それぞれの要素を関連付け、顧客ニーズ、自社の強み、競合他社の状況を具体的に結びつけることが重要です。大切なことは、この分析を通じて、どんな方向で差別化していくかを考察してくことです。
また、3C分析の視点は、経営者が日ごろから意識しておく重要なフレームワークでもあります。
日々、顧客ニーズや競合他社の動きも変化していますから、3C分析の視点で常に変化する状況にどのように対処していくべきかを考えて行動することが大切です。
このバランス感覚をもっていないと、顧客ニーズの変化や、競合他社の変化などに気づかず、打ち手が遅れてしまうことにもつながります。
また、顧客や、競合他社をあまり意識しないで盲目的に何かに投資してしまい、失敗するということにもつながります。日本中の中小企業で、そのような無駄な投資が繰り返されています。
<STP戦略>
STP戦略は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つのステップで構成される戦略です。市場を細分化し、自社に最適な顧客層を明確にした上で、競争優位性を構築するためのアプローチです。
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セグメンテーション(市場の細分化)
市場を年齢、性別、地域、嗜好などの基準で細分化し、各セグメント(顧客層)の特性を分析します。このプロセスにより、すべての顧客ではなく、自社が価値を提供しやすい特定のセグメント(顧客層)に集中できます。
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ターゲティング(標的市場の選定)
セグメンテーションで分類された市場から、自社が狙うべき顧客層を選定します。選定の際には、自社の得意なことや強みを最大限に活かせるセグメントを優先することがポイントです。
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ポジショニング(市場での位置づけ)
選定したターゲット顧客に対して、自社の商品やサービスをどのように認識させるかを設計します。他社にはない独自性をアピールし、顧客に選ばれる理由を明確にします。
STP戦略は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを順番に組み立てて完成させます。
まず、セグメンテーションで市場をニーズや特性に基づき細分化し、次にターゲティングで注力すべき顧客層を絞り込みます。そして、ポジショニングで、選んだターゲットに対して自社をどのように位置づけるかを決定します。
どの軸でセグメンテーションを行い、どう絞り込むか、また競合他社と差別化するためのポジショニングを考えるのは簡単ではありませんが、慎重に進めることで、効果的な戦略を構築する土台となります。
STP戦略の構築にあたっては、前述の3C分析を通じて顧客、競合、自社の状況を深く理解することがポイントです。
STP戦略は、中小企業の経営において強力な武器になりますが、使い方を誤ると、有効なフレームワークが逆に危険性を増すこともあるので注意が必要です。
たとえば、セグメンテーションを細分化しすぎると市場規模が小さくなり、採算が取れなくなる場合があります。
また、自社の競争力に見合わないターゲットを選ぶと、無謀な競争に巻き込まれ、利益率が低下するリスクが高まります。
さらに、顧客ニーズや競合状況を無視したポジショニングを行うと、ターゲット顧客から選ばれず、いつまでたっても市場開拓が進まず厳しい状況に陥ります。時間とお金を無駄にしないためにも、慎重な設計が求められます。
このように、フレームワークを効果的に活用するためには、正確な分析と一貫性のある戦略設計が不可欠です。実際に当社でカテゴリーキラーづくりの支援をする際には、このSTP戦略の構築に最も時間とエネルギーをかけています。
<4P戦略>
4P戦略は、商品(Product)、価格(Price)、販路(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素で構成される戦略で、顧客に価値を提供する具体的な方法を計画するフレームワークです。
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商品(Product)
顧客ニーズを満たす商品やサービスを設計します。顧客が他社では得られない価値を感じる商品を設計することが重要です。
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価格(Price)
製品やサービスの価値に見合った価格を設定します。中小企業は、価格競争を避けて、価値に基づいた価格設定を目指ことが大切です。
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販路(Place)
顧客が商品やサービスにアクセスしやすい販売チャネルを構築します。例えば、自社の商品・サービス、又は事業の特別な体験を提供できるチャネルを選ぶことで、顧客満足度を高められます。
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プロモーション(Promotion)
商品やサービスの価値を顧客に効果的に伝える方法を計画します。例えば、自社の商品・サービス、又は事業の魅力を引き出すストーリーやメッセージを伝えることで、プロモーション効果を最大化できます。
4P戦略を構築する際には、単に項目を埋めるだけではなく、具体的で実行可能なプランに落とし込むことが重要です。そして、何よりも重要なのが、3C分析やSTP戦略を踏まえたうえで4P戦略を考えるという、一貫性のあるアプローチです。
まず、3C分析を通じて、自社を取り巻く環境を深く理解することから始めます。顧客のニーズ、競合他社の動向、自社の強みや課題を明確にすることで、戦略の基盤を築きます。
次に、STP戦略を用いて、顧客の中でもどの層にアプローチすべきかを明確化し、他社にはない独自のポジションを設定します。この2つのステップをしっかりと行うことで、4P戦略の軸が整います。
4P戦略では、この軸をもとに商品・サービス、又は事業の価値を最大限に活かすための施策を統合的に設計します。
顧客が他では得られない価値を感じられる製品設計や、価値に見合った価格設定、ターゲット顧客がアクセスしやすい流通チャネル、そして魅力的に価値を伝えるプロモーションが求められます。
この一連の流れを通じて、中小企業でも限られたリソースを最大限に活用し、競争の激しい市場で成果を上げることが可能になります。
重要なことは、『急がば回れ』という言葉が示す通り、特に大きな投資を伴う新規事業や本格的な商品開発においては、時間をかけて戦略を練り、慎重に進めることです。
中途半端な取り組みでは、貴重な時間と資金が無駄になりかねません。一つ一つのステップを丁寧に掘り下げることで、自社にふさわしい戦略を構築することが可能になります。
5.スターバックスに見る、フレームワーク活用事例
3C分析、STP戦略、4P戦略について解説しましたが、皆様の身近なブランドとして「スターバックス」を例として、このフレームワークに基づいて考察していきましょう。
<3C分析(Customer, Competitor, Company)>
スターバックスは、顧客がコーヒーに求めるものを「高品質な味」「居心地の良い空間」「特別感のあるブランド体験」と深く理解しました。そして、このニーズを満たすために、自社の強みである高品質な豆と焙煎技術、バリスタの接客スキル、快適な店舗デザインを最大限に活用しました。
一方で、価格を重視する顧客をターゲットにしたドトールやコンビニコーヒーとは差別化を図り、「プレミアムな体験」を提供することで競合優位性を確立しました。
このようにして、スターバックスは顧客にとって唯一無二の「カテゴリーキラー」としての地位を築きました。
<STP戦略(Segmentation, Targeting, Positioning)>
スターバックスは、市場を細分化し、顧客の中でも特に「高品質なコーヒーを求める層」「リラックスした空間で時間を過ごしたい層」「ブランド体験に価値を見出す層」に焦点を当てました。
このセグメントをターゲットに選んだのは、単にコーヒーを提供するだけではなく、顧客に特別な体験を提供するというブランド戦略に合致していたからです。
また、「第三の場所(Third Place)」というコンセプトをポジショニングの核に据え、他のカフェチェーンやコンビニコーヒーが提供できない独自の価値を明確に示しました。
これにより、スターバックスは、単なるコーヒーチェーンを超えた存在として顧客に認識されることに成功しました。
<4P戦略(Product, Price, Place, Promotion)>
スターバックスは、プレミアムなブランド体験を提供するために、商品開発、価格設定、店舗展開、プロモーション戦略を一貫して実行しました。製品面では、高品質なコーヒーや季節限定のメニューを展開し、コーヒー豆やタンブラーなどの関連商品も提供することで多様なニーズに応えました。また、価格はあえて高価格帯に設定し、「特別な体験」の価値を価格に反映しました。
立地選定にもこだわり、繁華街やオフィス街といった顧客が集まりやすい場所に店舗を配置し、快適でリラックスできる空間を演出しました。
さらに、SNSやロイヤリティプログラムを活用したプロモーションを展開し、顧客との継続的な関係を築きました。この一貫した4P戦略により、スターバックスは、ブランド価値を高め、顧客に支持される存在となっています。
スターバックスの事例は、3C分析、STP戦略、4P戦略が単なる理論ではなく、現実のビジネスで「カテゴリーキラー」を創出するための実践的なフレームワークであることを示しています。
これらを活用することで、顧客のニーズを正確に把握し、競合他社との差別化ポイントを明確にし、自社の強みを最大限に引き出す戦略を構築できます。
重要なことは、3C分析で市場環境を分析し、STP戦略でターゲットを絞り込み、ポジショニングを確立し、4P戦略で具体的な施策に落とし込む一貫性です。このプロセスを通じて、顧客に「選ばれる存在」となることが可能です。
スターバックスの事例は、あくまで完成系の分かりやすい見本としてご紹介させて頂いたものです。
繰り返しになりますが、自社にあてはめて検討していく際には、このフレームワークをさらに深掘りして理解し、一つ一つの組み立てをしっかりと追求していくことが大切です。
6.中小企業のマーケティング戦略成功事例
以下の3つの事例は、当社のコンサルティングを受けて成果を出した、近年の代表的な成功事例です。
いずれも、マーケティング戦略を駆使して、直面した課題を乗り越え、差別化された強い商品・サービス、事業(=カテゴリーキラー)を構築することで、飛躍的な成果を上げた実例です。
<事例1:苦境を超えて、大ヒット商品の誕生!5連続ヒット達成!>
株式会社アックスヤマザキ(家電製造業/大阪府)
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コンサルティング前の課題
親子3代にわたりミシン専業を営む同社。しかし、年々縮小するミシン市場の将来に不安を抱えていました。
また、受託製造が中心の事業構造は価格競争の激化にさらされ、思うように利益が上がらない状況に。自社商品開発に挑戦するも、次のヒット商品を生み出せず、苦戦が続いていました。
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取り組んだ内容
ターゲット顧客にじっくり話を聞き、「子育て世代」に注目しました。特定の利用シーンに特化した「子育てにちょうどいいミシン」を開発。
余分な機能を削ぎ落とし、必要な機能に絞り込んだ商品設計を行いました。
また、競合製品との差別化を徹底し、SNSやPRを活用して認知度を高めました。大きな広告予算に頼らず、地道なマーケティング活動を展開しました。
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コンサルティング後の成果
同社のカテゴリーキラーとして誕生した「子育てにちょうどいいミシン」は、初年度販売目標の3倍以上の受注を達成。年商は1年で4億円から10億円超へ急成長。
その後も5連続でヒット商品を生み出し、同社は業界内外で注目される存在になりました。
著名メディアからの取材を受けるようになり、会社の認知度が向上。さらに、優秀な人材が入社を希望するようになり、事業基盤の強化にもつながりました。
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ポイント
年々縮小するミシン市場で、諦めずに強い「想い」でカテゴリーキラーを生み出そうと決心された経営者の「想い」が最大の成功要因です。
中小企業の新しい挑戦は、戦略立案の前に、リーダーの決意が成否を分けると言っても過言ではありません。
その強い「想い」、ぶれない「想い」がこめられたカテゴリーキラーは、強烈なパワーを生み出すのです。
「カテゴリーキラー」を持つことで、大規模な広告投資を行わなくても、ユーザーの共感を得て市場を切り開くことが可能です。
焦って「早く売り出す」ことに集中するのではなく、市場分析と商品企画にじっくりと取り組むことで、長期的な成功への道が開かれます。
この事例はその重要性を示しています。多くの中小企業は、焦って「早く売り出す」ことに集中して失敗しています。
モノづくりに例えるなら、設計がしっかりできていなければ、よいモノが作れないことと同じです。成功のカギは、売り出す前の市場分析と商品企画にかかっています。
<事例2:厳しい価格競争からの完全脱却!地方から全国展開へ!>
株式会社小池勝次郎商店(農業資材卸売業/埼玉県)
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コンサルティング前の課題
同社は70年以上にわたり、肥料を中心とした農業資材の卸売事業を続けてきました。
しかし、大手企業の進出により地元商圏で価格競争が激化。売上と利益が低迷し、販路や顧客層を広げられない状況が続いていました。
この先の経営を立て直すためにはカテゴリーキラーの創出が急務でした。
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取り組んだ内容
自社の強みを徹底的に見直し、競合他社には真似できない分野への方向転換を図りました。
そして、「モノ売り」から「コト売り」への転換を決断。長年の経験を生かし、農業生産のアドバイスを提供する「ネギ参謀」という新しいサービスを開発しました。
同社がネギ栽培の産地であることに着目し、地域に根ざしたノウハウを活用したこのサービスは、農業支援に特化したカテゴリーキラーとなりました。
また、「ネギ参謀」のブランディングを強化するため、専用ホームページやパンフレットを制作し、SNSを通じて広く情報発信を行いました。
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コンサルティング後の成果
「ネギ参謀」の創出から1年で売上が急回復し、過去最高を記録。
その後も成長を続け、数年後には、地元商圏を超えて全国47都道府県、2,000社以上へと取引先を拡大しました。
大手農業法人からの引き合いも増え、安定した経営基盤を築くことに成功しました。
価格競争から完全に脱却し、地域密着のノウハウが全国で評価されるようになりました。
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ポイント
「モノ売り」から「コト売り」への転換が、競合他社との差別化を生む最大の成功要因となりました。
この「ネギ参謀」を生み出すまでのプロセスでは、社長と幹部社員が一致団結し、戦略の妥協を一切許さずに取り組んだことが功を奏しました。
プロジェクトを通じて、幹部社員の成長も大きな成果となりました。
モノを売っているようで、お客様はコトを求めている業種はたくさんあります。どんなコトにフォーカスしていくかがポイントになりますが、それもお客様のニーズに寄り添っていくことが基本です。
思い込みだけで突き進むことなく、仮設と検証を繰り返して、丁寧に戦略を組み立てましょう。
ここで検証の精度を高めていく事が、成功確率を上げるだけでなく、プロジェクトに関わるスタッフの確信を高め、持続的な推進力につながるのです。
<事例3:待ちの営業から攻めの営業に転換!過去最高業績に!>
株式会社チュウセツシステム(通信工事サービス業/広島県)
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コンサルティング前の課題
電話・インターネットなど通信工事サービスを提供している同社では、業界特性上、仕事の依頼がなければ動けない「待ちの営業」が中心でした。
この受け身の営業スタイルは経営の不安要因となっており、攻めの営業を実現させるためのカテゴリーキラーの創出が大きな課題でした。
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取り組んだ内容
同社の強みを生かして、今後成長が見込まれる分野を模索し、介護施設向けに特化したICT化を実現するサービスを開発。
これを同社のカテゴリーキラーとして「介護施設“丸ごと”ICT化パック」と命名して発売しました。
ブランディングを重視して、専用パンフレットやウェブサイトを新たに作成し、積極的に提案営業を展開しました。
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コンサルティング後の成果
攻めの営業体制への転換に成功し、新規受注が当初目標の2倍に増加。売上と利益が会社設立以来の最高額を記録しました。
従来の「待ちの営業」に頼る体制から脱却し、会社全体が積極的に新たな市場を切り開く姿勢へと変化しました。
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ポイント
業界全体を見ると、工事会社が独自の商品やサービスを持つことは、まだまだ少ないと思いますが、このようにカテゴリーキラーとして、自社独自の商品を持つことが競合他社との差別化につながります。
工事会社以外でも、待ちの営業をしている会社は多いのではないでしょうか?
その場合、自社のカテゴリーキラーを生み出して、攻めの営業をひとつの売上の柱にしていくことは有効です。
本事例は、経営者が勇気をだして、その挑戦を行い大きな成果を手にしました。
商品は必ずしも自社開発である必要はなく、同社のように仕入れ商品を顧客ニーズに合わせて最適化(パッケージ化)することも有効です。
重要なことは、自社の強みが活きる、市場を丁寧に分析して、仮設検証を繰り返して、最適なカテゴリーキラーを生み出すことです。
7.中小企業のマーケティングで注意すべき5つのポイント
1.売り方に偏ったマーケティングをしない
中小企業の力を最大限に発揮するには、「売り方」に頼るまえに、まず「売るモノ」として、カテゴリーキラーと言えレベルのモノを生み出すことが重要です。新商品開発などにおいて、早々に売り出してしまい、後から販売で苦労するケースが後を絶ちません。
決裁する経営者の意識を変えていくことが大切です。
2.浅い市場分析のまま実行に入らない
「早く売りたい」という気持ちは分かります。しかし、浅い市場分析のまま動き出すことは、多くの失敗を招きます。
市場や顧客を深く理解し、売るべきモノや戦略をしっかり検証することが成功の鍵です。
3C分析やSTP戦略、4P戦略といったフレームワークを活用し、確かな戦略を持って、地に足の着いたマーケティングを進めていきましょう。
3.ひとつの仮説に固執しすぎない
新しい挑戦において「まずやってみる」精神は大切です。しかし、新規事業や商品開発において大型の投資を伴う場合は、スピードだけでなく慎重さも必要です。
中小企業でも1,000万円を超えるような大型の投資を「まずやってみる」精神だけで突き進めてしまうことがあります。
そういう話を聞くと、《投資すべき選択肢が本当にそれだけだったのか?》《本業とのシナジーが全く効いていないのではないか?》《企画段階でのつめが甘すぎないか?》と疑問に思う事がたびたびあります。
「これは絶対に売れる」と確信をもって進むことは大切ですが、その前に一度、多角的な視点で検証し、仮説を磨き上げながら進むことが大切です。「思いつき」から始まるアイデアも、戦略的に深めれば、大きな力になります。
4.ブランディング(表現開発)を軽視しない
中小企業の商品やサービスには、他にはない強みがあるはずです。
しかし、その強みが伝わらなければ、顧客に選んでもらうことはできません。
例えば、BtoC事業では、「手に取ってみたい」と思わせるパッケージやPOPが重要です。お店であれば、入店したくなる看板をはじめ、ファサードがかなり重要です。
BtoB事業では、問い合わせを促すホームページやパンフレットが勝負を決めます。
「使ってもらえれば分かる」ではなく、「使いたくなる」「問い合わせしたくなる」表現開発に力を注ぎましょう。
優れた表現は、営業マンに頼らずとも成果を出せる仕組みをもたらします。
戦略の精度を上げたあとは、その戦略が絵にかいた餅に終わらないように、ブランディング(表現開発)のレベルを最大限に高める努力が必要です。
ここで失敗すると、せっかく優位性があるポジショニングを設計できても、顧客に伝わらず失敗に終わるので注意が必要です。
5.色々な売り方に目移りしない
世の中には無数の「売り方」があります。しかし、多くを試そうとすると、どれも中途半端になりがちです。
中小企業の限られたリソースを最大限に活かすには、まずは、一つの「売り方」に集中し、それを自社のノウハウとして深めることが重要です。
そうやって一つ一つ丁寧に確立していきます。コツコツと積み上げていくことで、やがてそれが揺るぎない強みとなり、確実な成果を生む投資へと結びつきます。
ここが中小企業マーケティングにおける「ラストワンマイル」、つまり成果を上げるための最終的で決定的な取り組みとなります。
地道な努力が最終的に大きな差を生むことを信じて取り組みましょう。
「売り方」において、色々な手法を中途半端にやり散らかすことは避け、じっくりと時間をかけて試行錯誤を繰り返して、成果をつかんでいきましょう。
8.まとめ
マーケティングは、単なる商品を売る手法ではなく、顧客や社会に価値を創造し、自社の強みを活かして「選ばれる理由」を作るための包括的なプロセスです。
本コラムでご紹介した中小企業の事例は、厳しい市場環境の中で中小企業が独自の価値を見出し、「カテゴリーキラー」を生み出すことで飛躍的な成果を上げた実例です。
中小企業は、マーケティングに強くなることで必ず業績が上がります。
そのためには、まず経営者自らがマーケティングの理解を深め、その価値や意義をしっかりと腹に落とすことが大切です。
そのうえで、コツコツと会社全体のマーケティングレベルを引き上げていく事が、将来の大きな競争優位につながります。
中小企業の経営者は人材育成、企業発展の大きな要素として、ここに継続投資をしていくべきです。
マーケティングの正しい知識を身に着けて、挑戦を繰り返すことで必ず成長し、利益として還元されます。
本特別コラムでは、マーケティングの意味合いや注意点、基本的なフレームワークについて詳しくお伝えしました。
これらを実際に自社に適用することで、効果的な戦略を構築し、大きな成果を上げることが可能になります。
そのために、ここからさらに理解を深めてき、一歩一歩丁寧に進むことで、確実な成長への道が拓けるはずです。
マーケティングは、未来を変える大きな力を持っています。
まずは、自社の可能性を信じて、小さな一歩を踏み出してみてください。
希望を持って行動を起こし、次のステージに進む準備を始めましょう。
追伸:
今月は、1月22日(水)13時~セミナーを開催いたします。
これから本格的に、自社の差別化戦略を検討されている経営者、マーケティング力を強化していこうと考える経営者にとって、お役に立てる内容をお届けします。場所は、JR品川駅高輪口徒歩2分の会場です。
オンラインでもご参加頂けます。
ぜひ、2025年はマーケティングで突き抜けましょう!
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝